2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21225
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
李 相逸 九州大学, 芸術工学研究院, 学術研究員 (70738880)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 概日リズム / ヒト / 栄養 / 光環境 / 睡眠習慣 / 覚醒度 / フィールド実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非必須アミノ酸の一種である L-セリン単回摂取が朝の光に対する概日リズムの位相前進を促進する効果に注目し、生活習慣を統制しない日常生活におけるL-セリンの摂取が概日リズム、睡眠習慣、日中の覚醒度にどのような影響を与えるかついて明らかにすることを目的としている。概日リズムの位相変動に影響する要因は、光暴露履歴(光を浴びるタイミング)、睡眠習慣、社会的スケジュール、メディアの使用など、様々であるため、それらを統制しないフィールド実験は非常に挑戦的でもある。そのため、H28年度では予備実験として、男女大学生14名(男7;女7、平均年齢22.2±2.2歳)を対象に5週間(10/17~11/21)のフィールド実験を行った。1週目は実験に慣れる期間とし、本実験は2週目から開始した(ベースライン)。被験者はL-セリン群(n=7、男3;女4)とプラセボ群(n=7、男4;女3)に分かれ、3週目から2週間(10/30~11/13)にかけて3gの試験食品(L-セリンまたはトレハロース、double blinded)を毎日摂取した。また、最後の週では試験食品を中断した際の効果について検討した。本実験より得られた成果として、L‐セリンを摂取した群では摂取2週目から概日リズムの位相(メラトニン分泌開始時刻、DLMO)が前進し、摂取の中断とともに後退(リバウンド)する傾向が確認された。その反面、プラセボ群では顕著な位相変動は見られなかった。このことより、生活の統制を行っていなかったにも関わらず、日常においてもL-セリンの摂取が概日リズムの位相前進に寄与する可能性が示唆され、またその効果を得るには長期間摂取が必要であることが確認できた。しかし、睡眠習慣、主観的眠気(KSS)と覚醒度については、両群における違いはみられていない。他に、測定上の問題点や改善点を発見できたことも成果として言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、結果に影響する要因をほとんど統制しないフィールド実験では仮説通りの結果が得られないリスクが高い。予備実験を行ったことにより、予想結果や実験デザインにおける問題点の発見を検討することができた。さらに研究実績の概要に示しているように次年度の研究計画を進めるにあたって重要なデータが得られたため、順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
予備実験(平成28年度)から得られた結果を踏まえてH29年度にも同様なプロトコルで追加実験を行い、L-セリンの摂取が概日リズム、睡眠習慣、日中のパフォーマンスに及ぼす影響について明らかにしていく予定である。 ただし、予備実験から得られた細かい問題点については改善する必要がある。例えば、スクリーニング実験(就寝前のメラトニン濃度の確認)を通して被験者を選別したにもかかわらず、DLMO(メラトニン分泌開始時刻)が測定できなかった被験者がいた。そのため、スクリーニング実験を強化(例、21時から就寝時刻の間のメラトニン濃度を確認)し、本実験に適切な被験者を選別する。他にも、被験者のMotionWatch(腕時計型の活動計)の装着忘れが多いことが予想以上に多かった。MotionWatchは睡眠判定、活動量だけでなく、夜と朝の光暴露履歴といった本研究において非常に重要なデータを含んでいるため、次回の実験では着用有無や記録状況などを頻繁に確認する(最低でも週1回は被験者と一緒にデータを確認し、実験の継続を判断する)。 最後に、予備実験では被験者に睡眠日誌の記録(毎日)、主観的眠気(KSS)と2種類(Go/Nogo、N-back)の認知課題(毎週の月・水・金、1日4回)、唾液採取(自宅にて21時から就寝直前まで1時間ごとに実施、毎週日・木)の測定を行ってもらったが、次年度の実験では課題を減らして被験者の負担も減らす代わりにデータの制度を高めることを目指す。
|