2016 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞のFGF依存性機構の解明:Nodalシグナリングの多重制御
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16K21243
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
脇谷 晶一 宮崎大学, 農学部, 講師 (40621800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞 / FGF / Nodal-Activin / BMP |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトiPS細胞をアクチビンAとFGF受容体阻害剤PD173074を添加した培地で培養したところ、コロニー形成は認められたものの細胞間の明瞭化および多能性遺伝子であるOct4とNanogの発現低下が認められた。よってアクチビンA添加FGFシグナリング阻害条件下で維持されたヒト多能性幹細胞は通常とは異なる状態にあると考えられる。一方、PD173074添加後、OCt4とNanogの発現の低下はFGFの標的遺伝子とされているCriptoの発現低下より遅れたため、PD173074添加後の短期間においてはFGFの一次作用のみ影響を受けた状況を再現できると見込まれた。PD173074添加6時間後のヒトiPS細胞における遺伝子発現を確認したところ、Nodal-Activin阻害タンパク質であるFST, Lefty-1およびLefty-2の発現上昇が認められた。一方、細胞内でNodal-Activinシグナリングを干渉するNomo1, Nomo2, Nomo3およびNicalinのヒトiPS細胞内における発現はPD173074の添加による影響を受けなかった。このことから、FGFはNodal-Activinシグナリングを阻害する液性タンパク質の発現を広範に抑える役割を担うことが明らかになった。 FSTやLeftyの発現を誘導する経路にはBMP経路とNodal-Activin経路が候補に挙がるため、DMH1によりBMPシグナリングを阻害した状態でPD173074をヒトiPS細胞に添加したところ、DMH1の前処理によらずPD173074の添加によるFSTとLeftyの発現上昇を再現した。よって本研究で認められたFGFのNodal-Activin阻害タンパク質発現抑制作用はBMPシグナリングの抑制によらないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度はヒトiPS細胞に対するFGF阻害実験と親細胞に対するDNA脱メチル化実験を計画していた。iPS細胞を用いた実験は計画通り進み、当初の予想以上の数のアクチビン関連遺伝子がFGFの制御下にあることが明らかになった一方、DNA脱メチル化実験は親細胞がDNA脱メチル化剤に反応しなかったため、当初計画していた結果を得ることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在遅れているDNA脱メチル化実験に関しては、細胞株の種類を代えてDNA脱メチル化剤に反応することを既に確認した。今後はこの細胞株を用いて当初の実験を進めていく予定である。 また、当初はFGFの制御下にあるNodal-Activin干渉因子のノックダウン実験を行い、その意義を明らかにする予定であったが、予想以上に多くの因子がFGFの制御下にあることが分かり、それらを一括して調節する大元のメカニズムを解明することがより重要であることが明らかになったため、その解明に向けた計画に変更する必要性が出てきた。具体的にはFGFがE2aをLeftyプロモーターに保持し、NodalのネガティブフィードバックによるLeftyの発現誘導を抑えているとの初期仮説を設定し、その検証を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
当初計画していたDNA脱メチル化実験に関して、想定されたDNA脱メチル化反応が起きなかったため、計画に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遅れているDNA脱メチル化実験に関して、細胞株の種類を変更してDNA脱メチル化反応が起こることを既に確認したため、次年度使用額が生じた原因となった平成28年度の実施計画を平成29年度に次年度使用額を用いて実施する。
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