2017 Fiscal Year Research-status Report
同種内の音響コミュニケーションに対して他種の信号が与える影響
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16K21244
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
栗和田 隆 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50616951)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 種間競争 / 共存機構 / 配偶行動 / 音響シグナル / 直翅目 |
Outline of Annual Research Achievements |
音声のような、同じ媒体を使用するシグナルを求愛に利用する種が同所的に複数存在すると、別種のシグナルによってコミュニケーションが阻害される可能性がある。そのような場合には、同種のオスの質が査定し難くなるといったように、性選択圧が変化するかも知れない。 昨年度の野外調査によって、奄美大島の公園内で2種のコオロギ(タイワンエンマコオロギとネッタイオカメコオロギ)が同所的に生息していることが明らかになった。本年度はこの2種のコオロギを用いて以下の室内実験をおこない2種間の関係を解明した。 2種の密度と割合を様々に変更して飼育し適応度成分を測定することで、各々の種が相手の種及び同種に与える影響を定量化した。この実験は幼虫期、成虫期でそれぞれおこなうことで発育段階ごとの違いも明らかにした。その結果、幼虫期、成虫期ともにネッタイオカメコオロギはタイワンエンマコオロギから適応度に大きな負の影響を受けていることがわかった。一方でタイワンエンマコオロギはネッタイオカメコオロギからほとんど影響を受けていなかった。また、タイワンエンマコオロギは同種から大きな負の影響を受けていた。したがって、本二種は種間競争や繁殖干渉をおこなっている関係にあり、タイワンエンマコオロギが優位であることがわかった。この結果は日本生態学会第65回大会で発表し、現在論文を執筆中である。 また、野外調査を昨年度から引き続きおこない、2種が同所的に生息しており個体群動態に大きな変化がないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は同所的に生息する種間の競争上の優劣関係を決定することができた。また、体色変異に関わる遺伝率など各種の生態に関わる要因について発見をおこなうこともできた。しかし、種間関係を決定するメカニズムについてまで踏み込んだ研究をおこなわなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は他種の音響シグナルによってメスの配偶者定位行動がどれだけ影響を受けるのかを検証する。また、直接的な闘争や繁殖干渉といった行動が他種に与える影響も同時に検証する。また、野外調査を継続しておこない両種の個体群動態の変動を明らかにする。 さらに、種間相互作用をおこなっていない種(進化の過程で出会ったことのない種)のシグナルに対する反応も定量化することで、同所的に生息する種間では干渉を避ける適応が見られるのかも検証する。
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Causes of Carryover |
実験手順の効率化及び調査日程の見直しにより謝金及び旅費の一部が不要となった。次年度は野外調査回数を増やすとともに、さらなる効率化のために実験器具を増やす予定である。
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