2017 Fiscal Year Research-status Report
花粉分析と化石DNA解析による過去2万年間のブナ拡大過程の解明
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16K21245
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
吉田 明弘 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80645458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 花粉分析 / 化石DNA解析 / ブナ / 最終氷期 / 後氷期 / 東北日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究計画の2年目として,“いつブナが拡大を開始したのか?”と“どのようにブナが拡大したのか?”の両者を正確に把握するために,秋田県鳥海山龍ヶ原湿原のボーリング調査を行うと共に,青森県八甲田山ソデカ谷地と北海道函館沖海底コアの花粉分析を行った。さらに,昨年度に花粉分析を行った青森県高田谷地における泥炭堆積物を試料にしてDNA解析のためにブナの花粉化石の抽出を行った。今年度および昨年度の成果を合わせて,東北地方北部および北海道における後氷期のブナの変遷を明らかにでき,さらに来年度におけるブナ花粉化石のDNA解析に向けた下地ができた。また,本研究の成果やその一部は,国内では第32回日本植生史学会大会,日本地理学会2018年春季大会,国際的にはCOLS international workshop 2017 “Palaeoenvironment and lithic raw material acquisition during MIS2 and early MIS1: a comparative perspective”などにおいて公表した。本研究の成果を国内外に公表するために,Tree Genetics and Genomes誌やQuaternary Science Review誌などに投稿した。さらに,本研究の主目的の一つである完新世のブナの拡大開始時期を主とした論文は,近日中に国内誌に投稿する予定である。このように2年目の研究計画は着実に進展する部分もあるが,やや遅れ気味の部分もある。しかし,本研究の目的である遺伝情報の時空間的な比較を行い,ブナの拡大過程を解明するための下地を今年度は作ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目の今年度の計画としては,ブナ花粉化石を用いた葉緑体DNAの抽出と増幅として,1)堆積物からのブナ花粉化石の採取すること,2)ブナ花粉化石における葉緑体DNAの抽出と増幅することの2点であった。このうち1)について一部の堆積物で未着手ではあるものの,泥炭堆積物中からブナの花粉化石の抽出をすることができた。これにより今後のDNA解析を行なうための試料収集ができたことは評価できる。一方,2)については,DNA解析の研究協力者の所属の移動など重なったことにより,今年度に着手ができなかった。とくに,遺伝情報の空間的な比較を行うためには,ブナの花粉化石におけるDNA解析が重要であり,良好な結果が得られなければ更なる試料の収集が必要となる。このような状況から,当初の計画よりやや遅れ気味の部分であるため,総合的な判定を“(3)やや遅れている”と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度における研究計画の1つであったDNA解析について着手が遅れている。これはDNA解析の研究協力者の所属の移動などが重なった結果である。本研究ではすでに泥炭堆積物よりブナ花粉化石の抽出ができていることを鑑みると,葉緑体DNAの抽出と増幅などは外部委託することで,最も作業時間を要するブナの花粉化石の抽出作業を重点的に行い,研究計画の遅れを取り戻す予定である。そのためにも,研究協力者とは綿密な連絡を取っており,今後の計画について相談している。以上の推進方策によって,最終年度の目的である遺伝情報の時空間的な比較によるブナ拡大過程の解明について検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本年度における研究計画にあったDNA解析について着手が遅れたため,それにかかる実験消耗品を購入しなかったことで次年度使用額が生じた。作業の効率化と作業量の軽減を図るために,葉緑体DNAの抽出と増幅などは外部委託し,作業量を軽減することで遅れを取り戻す予定である。そのため,次年度の使用計画として,この実験消耗品を購入する予定であった予算をDNA解析の外部委託費用とする予定である。
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