2018 Fiscal Year Research-status Report
癌遺伝子ΔNp63とmicroRNAを介した癌の浸潤・転移機構の解析と治療応用
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16K21246
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
後藤 雄一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00637902)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ΔNp63 / ΔNp63β / EMT / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の浸潤・転移には、上皮-間葉転換(epithelial-mesenchymal transition: EMT)が関与していることが明らかとなってきた。これまでにわれわれは、口腔扁平上皮癌(oral squamous cell carcinoma: OSCC)細胞において、p53のホモログであるΔNp63のスプライシングバリアントであるΔNp63βが、EMTの誘導に関与していることを示し誌上報告を行った。しかし、その詳細な分子機構は未だ不明であった。今回はその分子メカニズムの検索過程においてmiRNAが重要な役割を担うことを導き、本年度の研究では、その中でもmiR-205について、ΔNp63βを介したEMTにどのように関与するのかOSCCにおける発現と機能を検討した。その結果、口腔扁平上皮癌細胞株において、ΔNp63を発現していない高転移株SQUU-B細胞に対して、ΔNp63βベクターを導入した強制発現株SQUU-BO細胞と、コントロールとして空ベクターを導入したSQUU-BC細胞の2つを用いてmiRNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、最も発現変動幅が大きかったmiRNAはmiR-205であった。また、OSCC細胞株におけるmiR-205の発現は、ΔNp63と同様の発現パターンを示し、ΔNp63を発現していない高転移株SQUU-B細胞において最も低かった。miR-205の標的となりうる遺伝子の中でも、細胞接着分子であるE-cadherinの発現を抑制することでEMTのプロセスに関与する遺伝子のひとつとして今回着目したZEB1およびZEB2の2つの遺伝子の発現は、miR-205の発現と逆相関していた。さらに、miR-205を発現していないSQUU-B細胞にmiR-205の強制発現を行うと、ZEB1とZEB2の発現低下と、E-cadherinを含む上皮系マーカーの発現亢進、間葉系マーカーの発現低下、遊走能および浸潤能の低下を認め、EMT形質を失う傾向にあった。また、miR-205を高発現している細胞にmiR-205のノックダウンを行うと、これと逆の結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ΔNp63βを介したEMTに関与するmiRNAを同定し、OSCCにおける発現と機能を検索し得た結果は研究協力者である橋口有真によりJ Cell Physiol誌にTumor-suppressive roles of ΔNp63β-miR-205 axis in epithelial-mesenchymal transition of oral squamous cell carcinoma via targeting ZEB1 and ZEB2.として掲載された (2018 Oct;233(10):6565-6577. doi: 10.1002/jcp.26267. Epub 2018 May 10. )。現在研究の過程で得た臨床的発見を論文報告するため準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の研究により、miRNAは細胞中だけではなく、エクソソーム中に取り込まれ、血清中にも存在しているということが明らかになっている。そこで、今回注目したmiR-205のバイオマーカーとしての可能性を検討するために、OSCC患者と健常者での血清中の発現量の比較を行う。OSCCの治療前後でのmiR-205発現量の変化や、再発や転移を認めた症例における発症前後のmiR-205発現量の変化などを測定することで、バイオマーカーとしての有用性を検討する。これまでの研究結果からも、miR-205がOSCCのEMTのプロセスに関与していることは明らかになりつつあるため、その結果として、再発や転移のきっかけになるという仮説のもと、血清中に反映されるのかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
目的とした国際学会への発表が行えず延期となったことと、論文投稿を行うにあたり期限内の投稿が間に合わなかったため。 翌年度は当初予定していた論文投稿を行い、国際学会での発表を行うとともに、次年度につながる動物実験に着手する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Significant association of increased PD-L1 and PD-1 expression with nodal metastasis and a poor prognosis in oral squamous cell carcinoma.2018
Author(s)
Maruse Y, Kawano S, Jinno T, Matsubara R, Goto Y, Kaneko N, Sakamoto T, Hashiguchi Y, Moriyama M, Toyoshima T, Kitamura R, Tanaka H, Oobu K, Kiyoshima T, Nakamura S.
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Journal Title
Int J Oral Maxillofac Surg.
Volume: 47
Pages: 836-845
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 敗血症初期蘇生管理における急性血液浄化療法-循環・体液管理- 当施設における敗血症性ショック時の循環管理法2018
Author(s)
垣花 泰之, 安田 智嗣, 二木 貴弘, 大隣 貴仁, 古別府 裕明, 寺田 晋作, 宮本 昇太郎, 山下 翔太, 町田 千尋, 後藤 雄一, 上国料 千夏, 伊藤 隆史
Organizer
日本急性血液浄化学会
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[Presentation] 敗血症性ショックにおける急性血液浄化療法の導入意義とは?2018
Author(s)
垣花 泰之, 安田 智嗣, 二木 貴弘, 大隣 貴仁, 古別府 裕明, 寺田 晋作, 宮本 昇太郎, 山下 翔太, 町田 千尋, 後藤 雄一, 上国料 千夏, 八島 望, 十時 崇彰, 谷口 賢二郎, 伊藤 隆史
Organizer
日本急性血液浄化学会
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[Presentation] 舌エコーの画像所見による潜在的頸部リンパ節転移の予測2018
Author(s)
服部 多市, 川野 真太郎, 三上 友里恵, 筑井 徹, 河津 俊幸, 松原 良太, 後藤 雄一, 金子 直樹, 坂本 泰基, 橋口 有真, 神野 哲平, 丸瀬 靖之, 田中 翔一, 大部 一成, 中村 誠司
Organizer
日本口腔科学会
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