2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K21252
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Research Institution | Aomori Public College |
Principal Investigator |
小寺 俊樹 青森公立大学, 経営経済学部, 講師 (10614141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | かかりつけ医 / 二面的市場 / 製品差別化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、患者を必要に応じて高機能病院に受け渡す、かかりつけ医のような仲介機能を含む医療市場の組織構造を明らかにすることである。そして、効率的な医療市場を設計するためのインプリケーションを導出することを目指す。本年度の研究概要としては、まず医療市場の現状を整理するため、医療機関の財務や経営に関するデータを収集し、病院が効率的な経営を行うための要因について分析を行った。病院の組織構造が整理されていることは、効率的な病院経営をもたらす可能性のあることが示された。さらに、患者の相談に応じている病院は、経営の効率性に関係することが明らかになった。この結果により、医療機関の競争をモデル化するためには患者に対して水平的または垂直的な差別化を行う医療機関を導入する必要があるとの示唆をえた。次に、医療市場における仲介機能のモデル化を図るため、二面的市場における仲介業者に関する理論研究に関する調査と分析に取り組んだ。仲介業者の水平的差別化の程度が、どのような要因によって決定されるかをモデル化し検討した。その結果、仲介業者の両側に存在する経済主体の獲得の程度によって、仲介業者の水平的差別化の程度が変化することを明らかにした。特に、一方の側の経済主体に対する獲得競争の激化は、水平的差別化の程度を小さくすることが示された。この結果を踏まえ、かかりつけ医の行動に関する理論研究を調査し、医療市場における仲介業者の理論モデルの構築に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するため、本年度は以下の点から研究に取り組んできた。まず、医療市場の現状を調査するため医療機関の財務や経営に関するデータを収集し分析した。その結果、医療市場のモデル化においては、製品差別化の議論ができるようモデルを構築する必要があることが明らかになった。次に、医療市場の仲介業者に関する理論モデルの基盤となる研究として、二面的市場における仲介業者が水平的差別化と価格競争を行うモデルについての調査研究を行った。その結果、仲介業者が獲得する両側の経済主体の数と水平的差別化の程度に関係があることが明らかになった。最後に、この成果を医療市場への拡張に向けた研究を進めている。かかりつけ医の行動に関する先行研究の調査を行い、寡占モデルへの拡張を試みている。しかしながら、仲介業の理論研究を医療市場に拡張するにあたり、検討すべき課題が明らかになった。まず、医療市場における価格競争についてである。自由診療が広く行われている国では医療サービスの価格競争の可能性はあるが、日本では価格競争が起こりにくい環境である。価格を固定化した上でのモデル化が必要である。第2に、かかりつけ医間において水平的差別化競争を想定した。しかしながら、提供される医療の品質に関する垂直的差別化についても考慮する必要がある。第3に、かかりつけ医は線形の費用関数を持つと想定した。より一般的な費用関数についても検討する必要がある。このような点を考慮し、分析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究について、以下の点から研究を推進していく。まず、「現在までの研究の進捗状況」で述べた課題を踏まえ、医療市場におけるかかりつけ医間の競争の理論モデルの妥当性を様々な角度から検証していく。次に、理論モデルから得られた結果についての解釈を行い、効率的な医療市場を構築するための政策について考察する。しかし、この理論モデルによって描写される医療市場の範囲は広くないかもしれない。そのため、事例研究等により医療市場の全体像をつかむ必要があると考えている。最後に、研究成果を学会等で報告するとともに、学術雑誌に投稿し広く公表していくことを考えている。
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Causes of Carryover |
研究経費を圧縮することにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、本年度参加する学会等の旅費、物品等の購入に充てる計画である。
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