2017 Fiscal Year Research-status Report
自主防災組織の形成にみる選択とその論理‐住民の日常的営為に着目して
Project/Area Number |
16K21253
|
Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
庄司 知恵子 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (30549986)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 自主防災組織 / 過疎化 / 高齢化 / 災害経験 / 責任の所在 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、平成28年度に行った秋田県仙北市の行政担当職員の調査、秋田県仙北市先達地区住民側への調査で得られた知見をもとに、自主防災組織組織化における行政側の論理と住民側の論理について整理を行った。 秋田県仙北市の自主防の組織率は、平成28年4月1日現在、9.7%と極めて低い。平成25年8月9日、豪雨土砂災害により、仙北市先達地区では住民6名が亡くなり、住宅全半壊が6件という被害となった。これを受け、町では防災の必要性を認識し体制整備を進めてきた。災害後、自主防の組織化を進めてきた結果、災害前までは4組織しかなかった自主防が24組織に増えた。とはいえ、カバー率は10%に満たない。担当者は「伸び悩んでいる」と話し、広大な地域を抱え、過疎が進行した地域における行政組織の限界を指摘し、「公助は往々にして遅れる場合がある」「人命や財産にかかわることであると考えると、自主防があるかないかで、差は出てくる」ことから、自主防の必要性を話す。 一方で、住民側は「地域の高齢化」を理由に、自主防の「実効可能性」を焦点に組織化を望まない。「何をどこまで担うことが求められるのか」「誰もが高齢である地域において、隣の人を助ける責任を負わされても困る」といった点をあげる。住民にとって、自主防は、「隣の人を助けること」を前提として捉えられている様子が見て取れ、行政側が思う、「自助を進める上でも、共助が必要である」という点が、住民の視点にはない様子が確認される。とはいえ、行政にとっても何かあったときの「公助」の限界の先に、自主防の役割を求めている点があり、「隣の人への声かけ」を期待していないわけではない。双方にとって期待のすり合わせが求められ、理想とすべき「自主防」の形を共有することが求められる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成30年1月出産のため、平成29年12月より産前休暇に入り、3月より育児休暇を取得している。平成29年度中は、体調が優れなかったため、予定通りの調査を進めることはできず、前年度調査で得られた内容の整理にとどまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度4月に復帰予定である。最終年度となることから、これまでの知見のまとめを行う。そのために、これまでの調査において不足するデータの取得につとめる。 仙北市・二戸市では、住民調査を中心的に行う。特に平成29年度、30年度は、岩手・秋田ともに豪雨による被害が多数見られ、それらにどのように対応したのかを調べる予定である。石巻市については、住民側の動きについて聞き取りを行っているので、行政側の動きについて確認を行う。これら知見を整理し、自主防災組織の組織化におけるバリエーションの提示を行う。
|
Causes of Carryover |
平成30年1月11日に出産をした。そのため平成29年度は、研究を中断し、また中断前においても体調不良のため、研究を制限せざるを得なかった。そのため、次年度使用額として残っている状況にある。
|