2018 Fiscal Year Research-status Report
AhRを介したアレルギー増悪に関わる多環芳香族物化合物の探索とその作用機序の追跡
Project/Area Number |
16K21278
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
三崎 健太郎 静岡県立大学, 看護学部, 助教 (40468591)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多環芳香族化合物 / アレルギー / サイトカイン / 抗原同時曝露 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ディーゼル排気微粒子(DEP)や黄砂のような大気環境物質のアレルギー増悪作用において、それに大きく影響する多環芳香族化合物と責任構造式の探索を行い、またそれらに対して強く応答するシグナルや細胞等の追跡によって、作用機序を解明することを目指している。これまでに多環芳香族化合物と抗原との共曝露影響に注目して、ヒト肺胞上皮(A549)細胞を用いてIL-8生を強く誘導する多環芳香族化合物のスクリーニングを実施し、ダニ抗原(10 μg/mL)との48時間共曝露において、複数の化合物に対してIL-8産生の顕著な増大が見出されている。しかし、系の再現性や細胞の接着性などにおいて安定性が得られなかったため、安定な検出系を得るためさらに検出条件の検討を実施したところ、ペニシリン、ストレプトマイシンの抗生物質入りのDMEM培地(FBS10%入り)で継代培養後、穏やかな転倒混和によって抗生物質入りDMEM培地(FBS不含)中に細胞を分散させてから、24ウェルコラーゲンコーティングプレート上に播種、1日後に抗原と各物質を同時曝露させてから48時間後のタンパク質を測定する条件が最適であることが確認された。その結果、48時間共曝露において、ナフトキノン(NphQ)、フェナントレンキノン(PhQ)(それぞれ500 nM)、無水フタル酸(PhA; 単環)、無水ナフタル酸(NA)(それぞれ5 μM)でIL-8産生の増加を顕著に改めて確認することができ、炎症や活性酸素種(ROS)誘導に関わる物質の寄与が示唆された。 一方、ヒト急性T細胞性白血病由来(Jurkat)細胞に対する研究も進めており、これらの細胞分化やシグナル誘導に対する各種多環芳香族化合物の影響を調べ、上皮細胞や各種免疫細胞との関わり、さらにAhR活性や抗酸化応答、NF-κB等の各種シグナル系との関連性についても順次調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヒト肺胞上皮(A549)細胞における炎症サイトカインの変動についてのタンパク質レベルでの評価における実験条件について再検討を実施し、数十種類の代表的な多環芳香族化合物類(AhR活性を示す4環以上のPAHsやoxy-PAHs(キノン体、ケトン隊、酸無水物、アルデヒド、カルボン酸、nitro-PAHs)の中からIL-8産生の増悪活性を示す化合物数物質を確認できた。また、CCL5(RANTES: regulated on activation, normally T-cell expressed and secreted)も測定したがタンパク質レベルではいずれも検出限界以下であった。他のサイトカイン(IL-6、IL-4、IL-5、IL-13、ICAM-1(intercellular adhesion 1)についても検出可能か検討を行っているところであり、mRNAレベルの評価も進めているところである。 また、ヒト急性T細胞性白血病由来(Jurkat)細胞に対して、分化刺激(PMAやionomycin)の存在・非存在下での各種多環芳香族化合物への曝露における、各種サイトカイン(IFN-γ、IL-4、IL-17、TGF-βなど)誘導への影響評価についても進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上皮細胞および血球細胞(特にJurkat細胞)の増殖や分化能、サイトカイン、表面マーカー、転写因子の遺伝子やタンパク質レベルでの発現変化に対してRT-PCRやELISA、フローサイトメトリー等による評価を進めていく。フローサイトメトリーは他機関での測定を予定している。シグナル経路として、AhR活性、抗酸化応答との関連性を、各シグナル伝達の阻害剤との共曝露による発現変化によって評価する。また、AhR活性との関連性が指摘されているTh17、Treg細胞における各種遺伝子、タンパク質誘導への多環芳香族化合物の影響を調べるため、RORγtやFoxp3の遺伝子を導入したJurkat細胞をその評価に用いて、活性化合物や活性曝露条件を調べ、各種シグナル経路との関連性を考察する。大気試料抽出物については、高いアレルギー活性を示す分画を探索し、含有成分との関連を調べ、同様に各種シグナル経路との相関解析を実施する。 In vitro系において十分な知見を得るように実験を進め、特に強く活性が見出された化合物については、成体マウスに対して多環芳香族化合物単独、あるいは抗原との共曝露によって気管内投与した際の、気管支肺胞洗浄液中の血球細胞の数や種類、サイトカイン、ケモカイン、抗体産生、各種遺伝子発現等をフローサイトメトリーや細胞染色、ELISA等によって測定する。
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Causes of Carryover |
年度末に購入予定だった消耗品(試薬やキット、細胞、マウスなど)について実験に要する時期が遅れたため、翌年度に購入するように変更を行った。 平成31年度はタンパク質、遺伝子定量に関わる試薬やキット、細胞の購入、またin vitro系における十分な知見を基にして、マウスなど実際の生体における作用機序への適用を目指している。
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