2016 Fiscal Year Research-status Report
サステナビリティ報告におけるテキスト表現の質的特性に関する実証的研究
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16K21293
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Research Institution | Tottori University of Environmental Studies |
Principal Investigator |
中尾 悠利子 公立鳥取環境大学, 経営学部, 講師 (50738177)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サステナビリティ報告 / CSR / テキストマイニング / 経営トップ / 環境報告 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本企業における2001年度から2015年度までの15年分のサステナビリティ報告の経営トップメッセージを対象とし,言葉の意図的な選択により,自社をより良く見せるもしくは悪いところを覆い隠すという印象管理が行われているかどうかをテキストマイニングにより分析を行った。 主な分析結果は,次の3つとなる。 第1に,環境・CSR関連の制度的文脈が語彙に影響を及ぼし,語彙自体に印象管理の可能性があるのかどうかを検討している。その結果,経営トップはその時代時代の社会的価値観に対応するような語彙の選択や文化的な解釈によって語彙の使用が行われていることを示した。 第2に,環境・CSRパフォーマンス上位・下位企業と語彙との関係を明らかにするために,多重コレスポンデンス分析の結果を布置図に示した。環境・CSR上位企業は,環境・CSRのテーマ性のある語彙と同時に印象管理語彙を使用する傾向が見られたが,環境・CSR下位企業は印象管理語彙と経営関連のテーマとの語彙との関係が見られた。 第3に,経営トップの特性として在職年数と環境・CSRパフォーマンス上位下位の組み合わせによる経営者の属性と語彙との関係を明らかにするために,多重コレスポンデンス分析の結果を布置図に示した。その結果,環境・CSRパフォーマンス上位下位関係なく,経営トップの在職年数が長ければ,関連する語彙が少なく,在職年数が短くなれば,本研究で位置づけた印象管理語彙との関連が示された。 この研究成果については、わが国のサステナビリティ報告のテキスト研究領域における新しい貢献であることから、現在、海外の査読つき雑誌に投稿する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、サステナビリティ報告のテキストマイニングに関する実証的考察が得られた。このような日本企業を対象とした実証的な分析結果が得られたため、平成29年度は査読つき海外学術雑誌に掲載を予定しており、現在、そのための準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究結果では、テキストマイニング分析においてわが国の代表的な企業54社の15年分の経時分析を実施したが,テキストマイニング分析においては,テキストデータが個別企業単位でも取得可能である。平成29年度は,個別企業単位でのテキストデータの分析を行うことを予定しており,その結果,わが国の企業別の分析として新たな検証結果が明示されることにつながる。
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