2016 Fiscal Year Research-status Report
子どもの問題行動に関する要因分析および支援者支援の構築
Project/Area Number |
16K21295
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
井上 幸子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (90747528)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 疫学 / 長期欠席 / 児童 / 学校適応感 |
Outline of Annual Research Achievements |
小中学生の暴力や器物破損などの問題行動や不登校の背景には、個人の要因だけでなく、メンタルヘルスの問題や、家庭や生活環境などの地域社会要因との関連も考えられる。しかしながら、関連要因についてはまだ十分に検証されていない。本研究では、ある県内の公立学校に通学する小中学生を対象に、生活満足感や他者からのサポート感などについて調査し、どのような要因が不登校や問題行動と関連しているかについて分析しその要因を明らかにする。これにより、子どもの問題行動や不登校の予防・早期介入・適切な支援につなげることを目的とする。さらに、不登校や暴力行為に対応する教育関係者の困難感やメンタルヘルスについても調査し、学校現場で児童生徒と担任教師等に必要な支援内容を明らかにする。28年度に実施した質問紙を用いた量的研究の調査では、学校適応感尺度を用いて小中学生の学校適応感6項目(生活満足感、教師サポート、友人サポート、社会的スキル、非侵害的関係、学習的適応)を測定し、長期欠席等の問題行動との関連性について検証した。このような学校生活への適応感と問題行動の関連性を検証し学校内で対応ができる可能性のある要因を明らかにすると同時に、29年度には小学校教諭へのインタビューを実施し、学校を休みがちな児童の家庭生活や地域特性を含めた背景要因について、質的な分析手法により明らかにし記述的にまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究実施に先立ちパイロット研究として実施した小中学生の学校適応感と長期欠席についての情報を分析し、本研究の分析計画の参考とした。小学生では生活満足感や学習的適応感が長期欠席に影響していることが示唆され、中学生では、生活満足感、対人的適応感と長期欠席との関連が示唆された。これらの結果を踏まえて28年度は、まず27年度分の情報を集約しデータベース化する作業を行い、データベースをもとに疫学的分析を開始した。また、現代の小学生年代の子どもの不登校の背景要因を整理し明らかにする目的で、不登校児童の支援を主に担当している小学校教諭にインタビューを実施し、その内容を質的に分析することとしている。28年度は一部インタビュー調査を実施したので、次年度はその内容の逐語録を用いて分析する作業を行う。さらに、中学校教諭の健康関連QOLについて、質問紙を用いた調査を実施しており、これらの調査計画は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,インタビュー調査の内容を質的に分析する作業をすすめ、学校適応感以外の背景要因を具体的に明らかにする。学校適応感尺度を用いた解析からも、生活における満足感が不登校・長期欠席に関連していることが示唆されたため、質的な分析からも関連要因について考察を行う。学校適応感尺度の情報を用いた量的研究については、縦断的な分析を行う予定であったが、調査協力施設との調整の結果、個人情報の目的外使用を防ぐ観点から縦断的な情報収集は困難であるとの判断に至り、29年度は28年度に作成したデータベースを引き続き継続して分析することとした。このため、学校適応感尺度と長期欠席や問題行動等の情報について、29年度に追加のデータ収集は行わないこととしたが、質的研究と並行して、学校教諭の困難感およびメンタルヘルスに関する調査も進行中であり、引き続き分析および論文にまとめる作業を継続して行う。
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Causes of Carryover |
英文校正費用が変動するため、予算に幅をもたせて確保し、使用したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年以降の研究において、研究成果発表にかかる諸経費(英文校正費等)として使用する。
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