2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもの問題行動に関する要因分析および支援者支援の構築
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16K21295
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
井上 幸子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (90747528)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不登校 / ソーシャルキャピタル / 地域 / コミュニティ / 生活満足感 / 学校適応感 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から引き続いて実施した不登校の背景要因の分析は、公立小学校の教諭26名にインタビューを実施し、逐語録を用いて質的に分析する方法で結果をまとめた。これまでの先行研究で報告されていた不登校要因のうち,親から子どもへの愛情不足や,対人関係スキルの低さ,生活リズムの乱れは、本研究においても同様であった.新たな背景要因として, 親の家庭教育力の低下,ゲームに没頭できる生活環境,不登校に対する価値観の多様化,地域の関係性の希薄化,多機関との連携不足が明らかになった.これらのうち、地域と関係の希薄化、支援者同士の多機関との連携不足は、子どもが育つ地域環境の変化を反映しているもので、現代の時代背景を捉えた要因であると考えられる。また、親の家庭教育力の低下やゲームに没頭できる生活環境は、両親が共働きの家庭やひとり親家庭の増加といった社会構造の変化が影響していると推察される。昨今は、インターネットを通じて他者と関わることが容易であり、学校集団に入らなくても友人関係を築く体験ができ、学習意欲を伴わない場合は特に登校することへの意欲も低下し不登校につながっている可能性がある。本研究では、学校現場だけでは対応しきれない家庭環境や地域環境の変化に関する要因が、子どもの不登校に関連している可能性を示唆していた。もう一つの研究は、中学生の学校適応感に関するデータを分析した内容で、対人関係、生活満足感、および学習適応感の低さが不登校の増加リスクに関連があることについて、研究報告にまとめた。本研究の対象者は中学生であり、発達段階や学習内容による差異を考慮する必要があるが、小学生を対象とした量的研究および質的研究で明らかにされた不登校に対する学校以外の要因と類似する生活満足感の低さが、不登校に関連していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体では、小中学生の問題行動および不登校の要因分析と支援体制の構築を目指して4つの研究が終了した。全国的には、問題行動としてあげられる喫煙、暴力、授業放棄については減少傾向であり、不登校の増加、特に小学校低学年で新規に発生する不登校の未然防止が課題となっている。そのため、4研究のうち2研究で、小学生の不登校に関して、量的・質的な手法により背景要因の分析を行った。当初計画していた縦断的なデータ収集は初年度に実施困難となり研究方法の変更を行ったが、小学生と中学生の両方の不登校および問題行動のデータについて分析が行えたこと、さらに、不登校については、量的・質的な分析を実施したことにより、これまでの不登校に関する研究ではほとんど報告されていなかった地域要因の影響が示唆された。これは、本研究による新たな成果である。今後は地域コミュニティと子どもの関わりについて調査を実施する必要があると考え、現在研究実施計画を立案している。支援者への支援の構築においても、学校教諭の健康に着目した研究が終了しているが、今後は、学校教諭に対する支援という視点のみでなく、地域コミュニティの関わりが子どもの不登校に影響を与える可能性を考慮し、地域住民にも着目する。これらのことから、最終年度は学校現場以外の地域コミュニティや家庭生活における支援についてさらに検討を深めるための研究を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度までに終了した研究結果から、地域コミュニティと子どもの問題行動や不登校の関連について示唆されたものの、先行研究はまだ多くない。学校現場以外からの介入方策を検討するためにも、まず地域住民を対象とした不登校児童への関心や問題行動への対応について調査を計画している。大学院生1名を研究体制に加え、これまでと同様の研究協力者の協力を得て研究を実施する。
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