2016 Fiscal Year Research-status Report
東北タイ農村の女性住民組織にみる共同性と公共性に関する研究
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16K21312
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
木曽 恵子 宮城学院女子大学, 付置研究所, 研究員 (80554401)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タイ / 住民組織 / 女性同士のつながり / 共同性 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は東北タイ農村女性の共同性と公共性に関する理論的考察と現地調査を行った。 まずは東北タイ農村における既存の親族・家族ネットワークの議論を批判的に考察し、既存の社会組織とは異なる性質の住民組織について検討する準備を整えた。具体的には、現代的状況でセーフティネットとして浮き彫りになる親族/非親族女性同士のネットワークについて論じた。その成果は、研究会や『宮城学院女子大学キリスト教文化研究所研究年報』で論文として発表した。 また平成29年1月から2月にかけて、タイにおいて以下のような予備的調査を行った。 (1)チュラロンコーン大学図書館、およびタマサート大学図書館で文献調査を行うとともに、関連分野の研究者に会い、意見交換を行った。 (2)政府関連機関を訪問し、担当部署で制度政策、および住民組織の成功例に関する聞き取りや資料収集を行った。 上記、およびこれまでの申請者の調査研究より、若者や子育て世代の都市での就労の常態化、少子高齢化を背景に、既婚女性が家族のケアと稼得役割という二重の負担に直面している状況を把握することができた。そのなかで住民組織は、伝統的な農村女性の仕事(例えば養蚕や繰糸、機織、儀礼用の菓子作り、保存用の発酵食品作りなど)を賃金労働として再構築し、既存の親族・家族ネットワークを超えた相互扶助組織として発達しつつあるように見える。また女性住民組織のリーダーが、行政委員や村長、区長選挙へ出馬する例も多く見られ、親族内外の女性同士の付き合いが、より公の場に東北タイ農村女性を進出させる基盤になっている可能性も明らかになってきた。以上のことから、リスクに対するセーフティネット、および公的な場への女性の進出基盤として、親族・家族を超えた女性同士のネットワークが創出する共同性や公共性の構築をめぐる問いへと焦点が定まってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集を主目的とした予備的現地調査をほぼ計画通りに行い、次年度から行う現地調査の基盤を整えることができた。本課題以前から申請者が取り組んできた課題との関連性も高く、今後新たな展開を発展させられる可能性が見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様に文献研究と海外現地調査を並行して行う予定である。現段階で当初の予定に大幅な変更は考えていない。具体的には、次年度前半にタイ東北部農村での現地調査を実施し、後半は論文や学会、研究会等において、収集したデータや考察した理論などの発表に力を入れていく。
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Causes of Carryover |
予定していた調査補助者と調査日程の折り合いがつかず、調査補助者なしで現地調査を行ったため。また現地調査で調達しようとした書籍の一部が入手できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であった書籍の購入費、および現地調査時の調査補助者を確保し、その費用に充てる。
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