2016 Fiscal Year Research-status Report
コレステロール代謝異常によるアルツハイマー疾患発症の解析
Project/Area Number |
16K21317
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山室 大介 自治医科大学, 医学部, リサーチレジデント (20739255)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アルツハイマー / NCEH1 / ACAT1 / 24S-ヒドロキシコレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー型認知症(AD)の原因因子とされる脳内アミロイドβの沈着がコレステロール酸化代謝物のひとつである24S-ヒドロキシコレステロール(24S-HC)の脳内増加によって抑制される可能性が報告されてきた。中性コレステロールエステル水解酵素(NCEH1)を発現するマウス臓器(特に脳、心臓、腎臓、副腎)のオキシステロール類をLC-MS/MSを用いて定量した結果、NCEH1欠損マウスの脳では野生型マウス脳に比べて24S-HCが有意に増加していた。また、記憶を司る脳海馬領域におけるACAT1およびNCEH1の発現量をreal-time PCRを用いて腹腔マクロファージ(MPM)と比較した結果、海馬ではACAT1, NCEH1ともにMPMよりも発現量が高かった。 そこで、NCEH1が脳内24S-HC量を規定することにより脳内アミロイドβの沈着を制御する可能性を動物実験及び細胞実験で検討した。 動物実験では、初年度にADモデルマウス(3XTg-ADマウス)とNCEH1欠損マウスを交配させ、NCEH1欠損ADモデルマウスを作成する計画だったが、マウス導入が遅れ、現在マウス導入中である。アミロイドβ沈着やタウ蛋白の過剰なリン酸化による神経細胞死はAD発症の一因となるが、脳内24S-HCも神経細胞死を誘発することから、細胞実験ではACAT1 阻害剤およびNCEH1阻害剤と24S-HCをヒト神経芽細胞(SH-SY5Y細胞)に作用させ、TUNEL染色法及びMTT assay にて細胞死を評価した。その結果、ACAT1 阻害剤では24S-HCが誘発する細胞死を有意に抑制したが、NCEH1 阻害剤では有意な影響は見られなかった。また、細胞内24S-HC含量をLC-MS/MSを用いて測定した結果、ACAT1阻害剤添加時にはfree体が、NCEH1阻害剤添加時にはester体の有意な増加が見られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ADモデルマウス(3XTg-ADマウス)とNCEH1欠損マウスを交配させ、NCEH1欠損ADモデルマウスを初年度に樹立する予定だったが、3XTg-ADマウスとNCEH1 欠損マウスとの交配マウスの作成期間の短縮を目的に、他のADモデルマウス (APPsw Tg)を交配に使用する計画にした。ADモデルマウス導入にあたり、凍結精子からの受精胚作成・移植を行ったが、着床は認められたが妊娠の維持がされなかった。現在、胚盤胞期までの発生状態を確認し、再度IVFによる受精胚の生産後、胚移植と凍結保存を行い、個体作成を継続する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
動物実験では、再度IVFによる受精胚作成・移植とからの個体作成を行う。作成したNCEH1欠損ADモデルマウスに関して、脳の海馬におけるアミロイドβの沈着を抗アミロイドβ抗体による免疫組織化学染色法にて評価する。アミロイド前駆体蛋白(APP)からのアミロイドβ産生を担うAPP切断酵素であるα,β,γ-secretase、アミロイドβ分解酵素のneprilysinおよびInsulin Degrading enzyme(IDE)といったAD疾患の原因分子をELISA kit、western-blottingや real-time PCRなどの生化学的手法を用いて解析していく。また、ADモデルマウスおよびNCEH1欠損ADモデルマウスにおける脳内CE量および24S-HC量をLC-MS/MSにて定量解析し、AD発症分子の発現量との相関関係を検証し、動物レベルでのNCEH1のAD発症への関与を明らかとする。細胞実験では、ACAT1阻害剤及びNCEH1阻害剤と24S-HCをヒト神経芽細胞(SH-SY5Y細胞)に作用させ、細胞死を評価したが、この際、Tau蛋白の過剰なリン酸化を引き起こす Glycogen synthase kinase 3β(GSK-3β)やAPP産生およびアミロイドβ産生をwestern-blotting法およびELISA 法を用いて評価し、α, β-secretase活性をwestern-blottingや real-time PCRなどの生化学的手法にて解析する。
|
Causes of Carryover |
ADモデルマウスの個体作成に遅延が生じ、次年度に作成継続するための費用が必要である。また、解析も延期されたため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ADモデルマウス導入にあたり、凍結精子からの受精胚作成・移植を行ったが、着床は下が妊娠の維持がされなかった。今後、胚盤胞期までの発生状態を確認し、再度IVFによる受精胚の生産後、胚移植と凍結保存を行い、個体作成を継続する予定である。
|