2017 Fiscal Year Research-status Report
破骨細胞の分化と成熟化シグナルのクロストークを探る
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16K21326
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
長谷川 紘也 明海大学, 歯学部, 助教 (00635899)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / 遺伝子治療 / カルデクリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も、骨代謝における破骨細胞の制御を目指し研究をすすめた。昨年度、破骨細胞様細胞RAW264.7細胞においてSyk阻害剤が細胞融合を促進することが示唆された。これは、分化の後期においてのみの効果であり、分化の初期ではSyk阻害剤は阻害的に作用した。しかしながら、このようなin vitroの結果が、in vivoで起こるのかどうか不明である。 一方で、使用したSyk阻害剤はこれまでに関節リウマチの治験においていくつかの有害事象を認めることが報告されている。in vitroの結果も考慮すると、使用したSyk阻害剤が関節リウマチの治療薬にはなりえないことが予想される。そこで、これまでの研究で破骨細胞に対して抑制効果を有したカルデクリンを用いて、この問題を解決できないかと考えた。 カルデクリンはエラスターゼ族に属する分泌プロテアーゼであり、急性膵炎発症時に頻発する低カルシウム血症の惹起因子と考えられている。タンパク質は生体に投与しても生体内での半減期が短いことから投与回数が増加すると考えられる。そこで、今回カルデクリンを遺伝子導入により発現させることでその問題を解決しようと試みた。安全性を考慮し、非ウイルス性ベクターのプラスミドDNAを脛骨付近の横紋筋に接種し発現させた。 関節リウマチモデルマウスにカルデクリンプラスミドDNAを投与しカルデクリンを発現させたところ、脚の指の腫脹は軽減した。このような作用は関節リウマチの第一選択薬として用いられているメトトレキサートを投与した場合と同じであったことから、カルデクリンプラスミドDNAの投与により関節炎の症状が緩和する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果からは達成度はやや遅れていると評価した。Syk阻害剤を用いたin vitroの結果を踏まえて、関節リウマチの治療薬としてメトトレキサートに代わる薬剤としての効果をカルデクリンが有していることを確かめた。メトトレキサートはリウマチ治療の中心となる重要な薬として使用されている。しかしながら、メトトレキサートは葉酸代謝阻害剤のため、副作用も多く認められている。血球減少症、間質性肺炎、感染症など重篤な病気を引き起こすこともある。 今回、薬剤効果としてアプローチの違うカルデクリンによる関節炎に対する効果を検討した。投与方法として、プラスミドDNAは遺伝子治療薬としてもゲノムに組み込みが起こる可能性が非常に低いことから安全性は高く、カルデクリンは膵臓に存在するセリンプロテアーゼであるとされていることから、生体内に存在するたんぱく質を治療薬として活用することになり、安全性の高い治療薬として考えられる。 しかしながら、今回用いたベクターがこれまでに用いたベクターと比較して、ややサイズの大きなベクターであったため、カルデクリンプラスミドDNAの組み込みに時間を要した。そのため、動物実験を実施する時期が遅くなり、動物実験の実施回数が制限された。そのため達成度はやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は関節リウマチにおけるカルデクリンの遺伝子治療薬としての可能性をさらに探求したいと考えている。次年度は、投与するプラスミドDNAの濃度を検証する予定である。また、作用機序を調べるため切片を作製し、破骨細胞数を計測する予定である。切片においてカルデクリンの遺伝子治療で破骨細胞数が抑制されれば、カルデクリンは関節リウマチに対し、初期症状の関節炎だけでなく、進行した症状についても緩和する可能性が期待される。
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