2017 Fiscal Year Research-status Report
高品質リアルタイム通信を可能とする決定論的カオスを用いた経路制御手法の開発
Project/Area Number |
16K21327
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
木村 貴幸 日本工業大学, 工学部, 准教授 (80579607)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 決定論的カオス / 経路制御 / 複雑ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では,平成28年度から平成30年度の期間に,将来の通信量増大に耐えうる通信を実現することを目的とした,カオスニューロダイナミクスを用いた経路制御手法の提案を目指している.従来法として用いられている最短経路手法では,経路が多く集中するハブノードにパケットの混雑が生じてしまい,これがネットワーク全体の混雑へと繋がってしまう.そこで,各ノードの次数情報を用いてノード間の距離を決定する距離行列を用いた,決定論的カオスを用いた経路制御手法を提案し,その評価を行った(平成28年度研究成果).前年度提案した手法について本年度は,より現実的なネットワーク環境を用いた場合の評価を行った.具体的には,ネットワーク内の局所的な情報を用いて,各ノードの送信能力やバッファ容量を多様化させたネットワークでの評価を行った.また,現実のネットワーク形状を反映しているスケールフリーネットワーク以外の,形状が不規則なランダムネットワークでの性能評価を行った.また,平成29年の研究計画で予定していた,通信経路のトポロジカルな解析も行っている.解析結果から,決定論的カオスにより通信路が多様化されることで,通信経路から構成されるネットワークは,よりエッジ数が多い形状となること,また,得られたネットワークの媒介中心性が分散されることを明らかにした.以上の研究成果に関して内容を纏め,学術雑誌であるNonlinear Theory and Its Applications, IEICE,でその内容を報告し,また, 国際シンポジウムである,2017 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applicationsで研究発表を行った.さらに,電子情報通信学会の各大会や研究会,電気学会などで研究発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,平成28年度の研究計画に従って提案した,次数情報と決定論的カオスを用いた手法について,より現実的なネットワークにおける性能評価や,種々の形状を有するネットワークを用いた場合の性能評価を行った.さらに,手法を用いて送信された到着パケットからなるネットワークを用いて,ネットワーク形状の解析を行った.数値実験の結果から,ノードの送信能力とバッファ容量に多様性が生じると,より性能が拡張されることを明らかにした.また,スケールフリーネットワークのみならず,形状がランダムなネットワークに対しても,提案手法は高い性能を有することを確認した.また,送信経路の解析では,最短経路戦略に基づく手法と比較してネットワークの平均頂点間距離が長くなるが,様々な経路を使用することで,パケットの送信が多様化され混雑が平準化されることにより,高い到着率を保つことが明らかとなった.一方で,カオスニューロダイナミクスを用いた手法とは異なり,ネットワーク内のパケット分布に応じて,各ノードのパケット送信先を変化させることを狙った,強化学習を用いた経路制御手法(平成28年度研究成果)に対して,パケット発生確率が時間的に変化する場合の性能を行い,提案手法は高いパケット到着率を達成することを確認した. 以上の研究成果については,電子情報通信学会の各研究会や大会,また,2018RISP International Workshop on Nonlinear Circuits, Communications and Signal Processingや2017 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applicationsなどの国際会議での発表や,Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE,でその研究成果を報告している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から,各ノードの送信能力が変化する場合などのより現実的なネットワークモデルにおいて,決定論的カオスを用いた経路制御手法は,従来手法である最短経路手法と比較し,パケットの増加に対して混雑を抑制し,パケット到着率を高く維持することが明らかとなった.種々のネットワーク形状に対しても,高い性能を有することも明らかとなった.さらに,到着したパケットの送信経路を解析から,送信経路が多様化されることで,パケット到着率が高くなることを示唆する結果を得ている.しかし,決定論的カオスがどのように働くことで,効率的な送信を実現しているかの効果は未だ明らかになっていない.そこで今年度の研究計画では,送信経路の多様化に対する決定論的カオスの効果についての解析を行う.まずは,経路制御におけるカオスダイナミクスの効果を確認するため,計算機実験により得られた時系列から,種々のサロゲートデータを生成し,これを用いた手法との性能比較を行うことにより,決定論的カオスの効果を解析する.この方法では,帰無仮説を用いることにより,得られた時系列が高次元の統計量,またはカオス的振る舞いを示すかどうかの検定を行う.従って,時系列がカオス的振る舞いを行っているかどうかの解析は可能となるが,時空間的に変化するパケット量に対して,カオスダイナミクスがどのように働いているかのミクロな視点での解析は行えない.そこで,パケット発生確率などを変化させた際に,各ノードで得られる時系列に対して種々の統計量を算出し,カオスの効果についての解析を行う.以上の研究課題に対して,研究代表者が数値計算のためのプログラム作成,数値計算を遂行し本計画を遂行する.
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Causes of Carryover |
・理由 研究を進めていく上で,必要に応じて研究費を執行した. ・使用計画 研究計画に変更はなく,前年度の研究費を含め,当初の予定通りの計画で進めていく.
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