2016 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫性疾患における全身性骨代謝異常の分子機構解析
Project/Area Number |
16K21329
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
横田 和浩 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20406440)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 関節リウマチ / 自己免疫性疾患 / 骨代謝異常 / 骨粗鬆症 / 破骨細胞 / 破骨細胞様細胞 / 炎症性サイトカイン / 抗環状シトルリン化ペプチド抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫性疾患は、全身性の骨粗鬆症を併発することが知られているがその機序は不明である。そこで本研究では、自己免疫性疾患における全身性骨代謝異常に関わる分子機構を明らかにすることを目的とする。 自己免疫性疾患の一つである関節リウマチ(RA)と健常人由来の末梢血単核球を破骨細胞分化因子(RANKL)または炎症性サイトカイン(TNF+IL-6)で培養・刺激し、RANKL依存性破骨細胞およびTNF+IL-6依存性破骨細胞様細胞への分化誘導機能に差異があるか比較検討した。 RA患者(n=7)と健常人(n=6)由来の末梢血から単核球を分離し、RANKLを培養液に添加・刺激し、従来の破骨細胞へ分化誘導させた。また、TNF+IL-6を培養液に添加・刺激し、破骨細胞様細胞(破骨細胞の特徴を呈する骨吸収細胞)へ分化誘導させた。RA患者と健常人由来の末梢血単核球から分化誘導されたRANKL依存性破骨細胞数とTNF+IL-6依存性破骨細胞様細胞数を酒石酸耐性酸フォスファターゼ染色にて測定した。 その結果、RA患者由来の末梢血から分離した単核球は、健常人と比較して、RANKL依存性破骨細胞およびTNF+IL-6依存性破骨細胞様細胞への分化誘導能が有意に亢進していた。また、RA患者において、血清抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)高値例(40以上)は、 40以下例と比較して、RANKL依存性破骨細胞およびTNF+IL-6依存性破骨細胞様細胞の分化誘導能が亢進していた。 そして、抗CCP抗体高値例(40以上)は、 40以下例と比較して全身骨骨密度が低下していた。 以上より全身性自己免疫疾患(RA)の全身骨代謝異常は、血清抗CCP抗体が末梢血単核球からの破骨細胞数および破骨細胞様細胞への分化誘導機構を亢進させるために惹き起されている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、申請者らの結果は、RA患者において、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)高値例(40以上)は、 40以下例と比較して、RANKL依存性破骨細胞およびTNF+IL-6依存性破骨細胞様細胞の分化誘導能が亢進していた。 そして、抗CCP抗体高値例(40以上)は、 40以下例と比較して全身骨骨密度が低下していた。 RA患者由来末梢血単核球において、RANKL依存性破骨細胞とTNF+IL-6依存性破骨細胞様細胞の分化に影響する因子の検討を行ったが、先述の血清抗CCP抗体以外には見出せなかった。 具体的には、RA疾患活動性評価指標(DAS28)、炎症反応(CRP、赤血球沈降速度)、マトリックスメタロプロテアーゼ-3(MMP-3)、リウマトイド因子、血清サイトカイン濃度(TNF、IL-6、IL-1)との相関について検討を行ったが、明らかな相関は認められなかった。 これは症例数が少ないことが影響していると考えられ、今後症例を積み重ねて検討する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、自己免疫性疾患を対象としているため、他の自己免疫性疾患(例えば膠原病など)の症例からの検体を採取することで症例数と疾患数を増やして、解析することで新たな知見が得られる可能性が大いにある。 また、血清抗CCP抗体陽性のRA症例のみの解析を行い、抗CCP抗体が末梢血単核球からの破骨細胞数および破骨細胞様細胞への分化誘導機構を亢進させている可能性を見出した。今後、抗CCP抗体陰性のRA症例についても解析を行う必要がある。 血清サイトカイン濃度測定については、ELISAキットによってはRA患者血清のリウマトイド因子が偽反応を起こしてしまい、異常高値を示してしまうことが知られている。このことから過去に報告された論文から適切なELISAキットを選択する必要がある。現在、選択したELISAキットで患者血清サイトカイン濃度を測定しながら、偽反応が無いか検討している状況であり、適切なELISAキットを選択できるように早めの検討を継続していく。
|
Causes of Carryover |
本研究は、自己免疫性疾患における全身性骨代謝異常の分子機構解析であり、RA患者および健常人の主には末梢血の解析を行った(RA患者においては、患者情報、RA疾患活動性評価指標DAS28、炎症反応(CRP、赤血球沈降速度)、MMP-3、骨密度などの解析を行った)。予想以上に症例が集まらず、請求していた助成金よりも使用額が少なくなってしまった。そのため、培養に使用予定のサイトカイン(リコンビナント)、培地、ウシ胎児血清、抗生物質、破骨細胞染色キット、サイトカインELISAキット、プライマー・プローブの使用がやや少なくなってしまった。 また、2016年にアメリカリウマチ学会への参加による研究に関連した情報収集を行う予定であったが、提出した演題が採択されず未参加となってしまった。そのため、旅費が発生しなかったことから次年度使用額が生じてしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は、自己免疫性疾患を対象としているため、他の自己免疫性疾患(例えば膠原病など)の症例からの検体を採取することで症例数と疾患数を増やして、解析することで新たな知見が得られる可能性が大いにある。このことから他疾患でも解析を行うようにすることで次年度使用額を使用するようにする。また、抗CCP抗体陽性のRA症例のみの解析を行い、末梢血抗CCP抗体が末梢血単核球からの破骨細胞および破骨細胞様細胞への分化誘導機構を亢進させている可能性を見出した。今後、抗CCP抗体陰性のRA症例についても解析を行うことにより次年度使用額を使用する予定である。 また、患者および健常人の血清サイトカイン濃度測定において、偽反応の無いELISAキットを検討中であり、予備実験において適切なものが見つけられれば、そのキットを購入することにより次年度使用額を使用する予定である。
|