2017 Fiscal Year Research-status Report
子宮体癌におけるDNA傷害修復経路を標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
16K21330
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮坂 亞希 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10754997)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 子宮体癌 / 相同組換修復 / PARP阻害薬 / BRCA / MED1 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA損傷修復は化学療法、また放射線抵抗性機序に関わると考えられる。 子宮体癌において、DNA修復経路を抑制することによる抗腫瘍効果の増強について検討を行った。 近年DNA修復に関与する婦人科腫瘍治療薬としてPARP阻害薬が注目を集めている。PARP阻害薬はBRCAの機能障害に陥っている癌腫に対して、相同組換修復(Homologous recombination: HR)を停止して細胞死を促し、抗腫瘍効果を発揮すると考えられている。HR機構の解明によってBRCAが欠損した癌腫のみならず、新たなPARP阻害薬の治療標的の発見につながる可能性がある。 本研究では ①DNA修復経路を標的とした治療薬の併用療法についての検討、②DNA修復経路に関わる分子の機能解析、③相同組換修復異常を標的としたPARP阻害剤の感受性に関わる因子の探索、が主な検討項目である。 ①について、DNA相同組換修復因子であるATMの阻害薬と、化学療法薬ドキソルビシンを併用すると抗腫瘍効果が上昇することを示した。PARP阻害薬についても、併用する分子標的薬を細胞株に添加した状態でPARP阻害薬を添加し、clonogenic assayやアポトーシス検出実験を行って抗腫瘍効果を検証する。また②・③についても検討を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮体癌におけるDNA修復経路を標的とした治療薬の抗腫瘍効果を中心に順調に研究が進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
子宮体癌再発症例において、PARP阻害剤を活用していくことで、治療対象症例を広げられる可能性がある。抗癌剤や放射線とPARP阻害剤を併用し、抗腫瘍効果の増強が得られるか検討していく。 ・子宮体癌細胞株に薬剤を添加した状態で、放射線照射、またはPARP阻害剤添加を行い、治療効果を検証する。細胞株毎で比較することで、併用療法の効果を予測するバイオマーカーを同定する。・in vivoにおける放射線照射と分子標的薬併用療法の有用性の検証. 子宮体癌細胞株を移植したヌードマウスにおいて、放射線照射/PARP阻害剤と分子標的薬の併用治療を行い、in vivoでの腫瘍縮小効果を確認する。・腫瘍組織から蛋白、RNAを抽出し、標的薬による阻害効果、細胞死誘導効果について検証する。・ヒトでの臨床試験における使用経験のある薬剤を優先的にin vivoで用いることとし、臨床試験への橋渡しを促進するように努める。 HR機構の解明によってBRCAが欠損した癌腫のみならず、新たなPARP阻害薬の治療標的の発見につながる可能性がある。本研究では、新規HR因子として同定されたBRCA1の転写共役因子MED1 (Mediator complex subunit 1)に着目し解析を行った結果、DNA損傷誘導下で、転写因子は、本来の役割の他に、DNA修復因子の誘導やチェックポイント調節因子を誘導する役割も担っている可能性が示唆された。このことから、MED1の突然変異のような転写機構の異常はゲノムの不安定性をもたらし、腫瘍発生の起源になりえる。それと同時にBRCAnessと同様、PARP阻害剤の治療標的となる可能性も考えられる。転写機構と複製機構の衝突が二重鎖DNA損傷を誘発する可能性について、蛍光免疫染色(S9.6抗体の核内intensityを定量評価・比較する)やDRIP assay などを行い、検討していく。
|
Causes of Carryover |
理由:初期のin vitoroでの研究の消耗コストが低い額でおさえられたため。 使用計画:本研究では様々な癌細胞株の網羅的な解析が必要となるため、そのための試薬代を算出している。また、細胞培養用試験薬、Western blotting用の各種抗体、各遺伝子についてのシーケンス解析などの費用が必要となる。 本研究ではin vivoでの抗腫瘍効果の証明が臨床応用へと発展させる上で極めて重要である。ヌードマウス研究にかかる費用も要する。また併用効果の検討のために、臨床試験にすでに使用されている分子標的薬の化合物を購入する予定である。これらはマウスモデルに使用するためにin vitroよりも必要量は多くなる。in vivo試験に必要となる試薬代も次年度で使用する予定である。
|