2017 Fiscal Year Research-status Report
宗教的パラケルスス主義――初期近代ドイツ語圏の「科学」と「宗教」
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16K21332
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
村瀬 天出夫 聖学院大学, 人文学部, 特任講師 (40768503)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パラケルスス主義 / 科学と宗教 / 宗教史 / 科学史 / ルネサンス / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究題目である「宗教的パラケルスス主義」について本年度は三つの著作(パラケルスス『像について』、偽パラケルスス『事物の本性について』、P・リンク『三時代について』)にかんする研究を進め、昨年度までの研究で得られた知見と総合し、以下の学術大会での発表を行った。 11月:国際会議「米国科学史学会」トロント(カナダ、英語発表)、12月:国際シンポジウム「パラケルススにおけるホムンクルス論、再生論、物質変成、生と死」パリ(フランス、英語発表)。 これらの国際的な大会で、本研究にかんする有意義な批判と助言を受けることができた。とりわけW・ニューマン教授(米・インディアナ大学)、D・カーン教授(パリ・ソルボンヌ大学)、H・ヒライ研究員(オランダ・ナイメーヘン大学)らとの議論では、今後の研究推進にかんする重要な視点を得るとともに、次年度以降の国際的な研究プロジェクト(国際シンポジウム[2019年春]の開催、論集刊行[2019年初頭])の立案を進めることができた。 7月には研究代表者が翻訳および解説を付した『原典ルネサンス自然学』(池上俊一監修、2018年、名古屋大学出版)が出版された(上巻第一四章:パラケルスス『像について』)。これには本研究において得られた最新の知見を盛り込むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記(5.「研究実績の概要」)の研究とその報告ならびに図書出版に加えて、研究環境のさらなる充実化と基礎的文献の収集が進められた。また以下の論文群を執筆・投稿し、これらは2018年度に刊行予定である。「Alchemie und Eschatologie」(早稲田大学『国際シンポジウム:ルネサンス期におけるテクスト、学者そして政治』)「Analogie als Magie」(日本独文学会国際誌『Germanistik』通巻157号)、共著『ルネサンス・バロックのブックガイド』ヒロ・ヒライ監修、工作舎(パラケルスス関連4項目)。 予定していたドイツでの資料調査は延期となったが、パリおよびトロントでの研究会合ならびに現地調査において、国内では入手が難しい資料について新しい情報を得ることができため、部分的には国外の研究者の助力を得て資料を入手することができた。このことは昨年度から「困難状況への対処」策として進めてきた国際的な研究者ネットワーク拡充の賜物である。また、他の資料については当地(パリ、トロント)のデジタル・アーカイブを利用することによって部分的に補うことができた。残りの資料(特に写本類)については次年度にドイツ(ハイデルベルクおよびヴォルフェンビュッテル)で資料調査を行う(夏期)。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から進めてきた重要著作群にかんする分析を踏まえて論文の執筆・投稿・刊行を進めていく。論文執筆として並行して、夏期から冬期にかけて国内外での研究報告を計画している。夏期には上記のとおりドイツでの最終的な資料調査を行う。 アウトプットとしては以下の計画が進行中であり、これらを引き続き進めていく(2018年~2019年春刊行予定)。①「パラケルスス文書における救済史」(2016年Villa Vigoni国際シンポジウム論文集)、②事典項目『Encyclopedia of Early Modern Philosophy and the Sciences』(独Springer社)、③「パラケルスス『像について』と偽パラケルスス『自然の本性について』」(米『Ambix』誌)、④「パラケルスス主義とJ・ベーメ」(国内宗教学関係学会誌)、⑤「第二次世界大戦期のパラケルスス像」(『歴史評論』)、⑥「パラケルスス(仮)」(『ドイツ語が紡ぐ世界:第二巻』ひつじ書房)、⑦事典項目『ドイツ哲学・思想事典』(ミネルヴァ書房)。 これらの他、国内の宗教学および科学史関連の学会への投稿論文ならびに単著(『宗教的パラケルスス主義(仮)』)の準備を進める。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度に購入しようと計画していた物品が購入できなかったことが主な理由である。 (使用計画)当初、本年度に購入しようと計画していた物品を次年度に購入する。
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Research Products
(3 results)