2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K21345
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
高橋 雅裕 学習院大学, 理学部, 助教 (00613697)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非平衡相転移 / 異方的浸透普遍クラス / 渦糸乱流 / 冷却原子気体 / 超流動 |
Outline of Annual Research Achievements |
冷却原子の系の実験を定量的に再現する Gross-Pitaevskii (GP) 方程式を、周期境界条件の下、3 次元空間において時間発展させるシミュレーションを行った。凝縮体の波動関数の位相欠陥として定義される量子渦の密度を、乱流を特徴付ける秩序パラメーターとして、その変化を調べた。系の揺動に用いるランダムでなめらかなポテンシャルは、これまでと同じスプライン補間を用いたものを使用した。 熱的な効果を理解するために、各渦の長さに対する確率密度関数を数値的に導いた。定常状態観測において、熱的な渦が支配的な領域と、渦糸乱流状態に転移した後の臨界指数があらわになる領域では、明確にその統計性に違いが認められた。熱的な渦が支配的な領域では、渦の長さの統計性は指数的であるのに対して、渦糸乱流状態に転移し、臨界指数が見える領域では、ベキ的な統計性が見られた。また、ベキの指数は約 -1 と -2 という 2 つのものが見えた。この指数の値に関しては未だ導出を試みている。 発達乱流状態から、臨界点付近の揺動ポテンシャルへのクエンチのシミュレーションでは、パラメーターによっては途中に現れる小さなプラトーがこれまで見つかっており、原因が分からなかった。今回、様々な物理量を観察していく中で、プラトーが凝縮体の粒子数の減少と増加に起因して起こる現象だということが分かってきた。粒子数の一時的な減少は、発達乱流で多かった高波数の成分がクエンチによって急激に減少するためではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
定常状態観測において、渦糸乱流への転移点前後での各渦糸長さに対する確率密度関数を数値的に導いた。転移の臨界指数が見える前では、渦の長さに対してその統計量は指数減衰するのに対して、異方的浸透現象 (DP: Directed-Percolation) 普遍クラスの臨界指数が見える領域では、渦の長さに対してその統計量は 2 つのベキで減少することが分かった。この統計量の指数の定量的な理解に関しては現在調査中である。 パラメーターを変化させてシミュレーションを行う中で、粒子数密度が予想よりも大きく変化していることが分かった。この粒子密度の変化によって、クエンチのシミュレーションでのプラトーが出ることが分かった。粒子密度の変化に関して、解析的に Gross-Pitaevskii (GP) 方程式を解くことで、その理由を大まかに理解することができた。より定量的な理解を行なっている。 パイプ中の渦輪のシミュレーションには、上記の粒子密度の変化の発見があり、そちらの解析を優先したため、着手が遅れた。次年度に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 28 年度に明らかにできなかった点に関して解析を引き続き行う。具体的には、各渦長さの統計性に現れるベキの定量的な理解や、クエンチにおいて、粒子密度が非単調に変化する原因の解明等がある。 また、パイプ中の渦輪のシミュレーションを早急に行う。こちらは、プログラムはすでにあるので、早急に取り掛かることができる。古典流体との比較をすることで、その違いや、古典流体では分かり得なかったことを、量子流体の特性を活かして解析する。特に渦の量子化に伴う有利な点があるので、これを活かす。 当初の研究計画にあるように、多成分 Bose-Einstein 凝縮 (BEC) であるスピナー BEC での、ランダムポテンシャル下での乱流転移に着手する。これまで、(単成分) スカラー BEC で得られた知見を元に、違いを見いだすことができると期待する。
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Causes of Carryover |
計算機購入に際して、繰り上げ使用申請を行った。一方で、各種の割引と節約を行うことで、少額の繰越金が生まれた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額の繰越分と、当該年度の助成金を用いて、当初の計画通り、計算機の購入、旅費の支出、論文出版費等の必要な支出を行う予定である。近年、高性能計算機の価格の上昇及び為替相場の影響で、計算機の購入について支出が増える傾向にあるので、繰越分をそこに充てることで、当初の計画通りに予算の執行を行う予定である。
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