2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の生活機能低下を高精度で予測可能な運動機能テストの判定方法の開発
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16K21348
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
上出 直人 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20424096)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 運動機能 / 生活機能 / 高齢者 / 判定方法 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,高齢者の生活機能低下を予測するための運動機能テストの判定方法を確立することである.そこで,本研究では地域で自立した生活を送る65歳以上の高齢者を対象に,生活機能,運動機能,身体組成,転倒,心理・社会的要因に関して,横断調査および縦断調査を実施することを計画した. 研究3年目となる本年度は,対象者の偏りによる解析結果への影響や統計学的検出力を考慮して,これまで2年間実施した調査に加えて,横断調査と1年後の追跡調査(縦断調査)を追加実施し,サンプルサイズを増やした.本年度実施した横断調査により,総計639名の地域高齢者に対して,生活機能,運動能力,身体組成,転倒,心理・社会的要因の調査を完遂した.639名の対象者の属性は,平均年齢71.7±4.8歳,男性は175名(27.4%)であった.健康状態としては,抑うつ98名(15.3%),過去6か月以内の転倒歴60名(9.4%),保有疾病数は平均0.8±0.9疾患,服薬数は平均1.1±1.0種類であった.主観的健康観では「悪い」と回答した対象者は26名(4%)のみで,AWGS基準に基づくサルコペニアの高齢者も21名(3.2%)と先行研究の報告と比較しても少ない結果であった.従って,全般的に健康状態の良好な対象者集団であった. 横断的に生活機能と運動機能との関連を検証すると,生活機能低下(IADL低下)と5m快適歩行時間,5回椅子起立テスト,アップアンドゴーテストが有意な関連を示した. 縦断調査では,305名に対して1年後の追跡調査を完遂した.追跡調査に参加した対象者では,生活機能低下(IADL低下)が有意に改善していた.同時に,横断調査で生活機能と関連を示した5m快適歩行時間,5回椅子起立テスト,アップアンドゴーテストも有意に改善していた.従って,高齢者の生活機能の変化には運動機能が影響していることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに実施した調査において,総計519名の地域高齢者に対して,運動機能,生活機能,身体組成,転倒発生状況,心理・社会的要因について調査を完了していた.これは当初の研究計画における目標対象人数を上回るものであった.しかし,想定よりも生活機能や運動機能が高い対象者にサンプルが偏ってしまったことや,最終的な統計学的解析における検定力を考慮して,今年度は横断調査および縦断調査を追加実施しサンプル数を増やした. その結果,2018年度末の時点で,ベースライン調査として総数639名,1年間の縦断調査として305名の対象者に調査を完遂し,予定したデータの取得をすることができた.すなわち,横断調査および縦断調査ともに統計学的解析を行うに十分なサンプルを確保できた状態にあると考えている.従って,本研究課題における課題遂行状況としては順調に進展していると考えている. 一方で,年度末までデータ取得のための縦断調査を継続したことで,データの解析および研究成果の発表については年度内で行うには十分な期間がない状況となった.そこで,データの解析および成果の発表については研究期間を一年間延長することで遂行していく計画としている.
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Strategy for Future Research Activity |
3年間の調査によって得られたベースライン調査の対象者639名,1年間の縦断調査の対象者305名の運動機能,生活機能,身体組成,転倒発生状況,心理・社会的要因に関するデータに対して,データ整理を行っていく.データ整理が完了後,詳細な統計学的分析を実施してく予定としている.具体的には,ベースライン調査で得られたデータから横断的な統計学的分析を行い,運動機能と生活機能との関連を検証したうえで,生活機能低下を検出するうえで最も感度が高い運動機能の判定方法を検討していく.その後,横断調査によって得られる運動機能の判定方法を縦断調査のデータに適用し,縦断的な生活機能の変化の検出に対する,運動機能の判定方法の妥当性を確認・確立していく予定としている. 一連のデータ解析に加えて,解析の結果として得られると期待される主要な結果や副次的な結果について,本研究課題の学術的成果として学会や学術誌へ積極的に発表していく予定である. なお,本研究課題を遂行するために必要なデータの取得は完了しており,また統計学的な検出力を考慮して当初計画よりもサンプルサイズを増やすことにも成功している.今後は,得られたデータを整理し,統計学的な解析を行っていく状態にあるため,本研究課題については順調に進捗しており,このまま課題遂行をしていくことが可能であると考えている.
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Causes of Carryover |
サンプルサイズを増やすために,2018年度末まで横断調査および縦断調査を追加実施した.そのため,最終的なデータの解析および成果の発表まで年度内で実施することが困難となった.次年度使用額は,研究成果の発表のための予算であったため,前記のとおり研究成果の発表まで年度内に完遂することができず差額として生じたものである.2019年度は次年度使用額分にて研究成果の発表を行う予定である.
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Research Products
(14 results)