2016 Fiscal Year Research-status Report
分子動力学を基盤とした剛直キラルドーパントが有するらせん誘起力の理論的予測
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16K21353
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
渡辺 豪 北里大学, 理学部, 助教 (80547076)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子動力学 / 液晶 / らせん誘起力 / 分子キラリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ネマチック液晶に剛直骨格のキラルドーパントを混合した系に対する分子動力学シミュレーションによって、キラルドーパントのらせん誘起力を理論的に求める手法の確立を目的としている。初年度では、ネマチック液晶/キラルドーパント混合系の分子動力学シミュレーションのモデル構築に取り組んだ。まず、ホスト液晶のみの系に対するシミュレーションでは、系全体の配向秩序パラメータは実験値と非常に良い一致を示す結果が得られた。また、キラルドーパントとして選択したRu錯体分子については、シミュレーションによって結晶構造を再現することで、最適な力場パラメータを求めた。これらの結果をもとに、ネマチック液晶にRu錯体分子の光学異性体を同数混合したラセミな系に対し、分子動力学シミュレーションを行った。配位子の置換基が異なる数種類のRu錯体分子について十分な計算時間のシミュレーションを実行済みであり、配向秩序パラメータをはじめとする物性値は、実験系を十分に反映している結果となった。更に、そのうちの幾つかの系においては、Surface Chiralityモデルの秩序テンソルに対応するパラメータを解析している。求めた秩序テンソルと、分子形状より計算可能なねじれテンソルとを用いることで、キラルドーパント分子が有するらせん誘起力を算出した。そして、求めたらせん誘起力の理論値は実験値と良く一致していることが確かめられた。既にホスト液晶が異なる系についても、構築したモデルの妥当性の検証を始めているが、次年度ではホスト液晶とキラルドーパントの組み合わせが異なる複数の系に対しても行う予定である。更には、異なる分子構造のRu錯体キラルドーパントに対してもらせん誘起力を理論的に求め、実験値と比較することで、より汎用性の高い手法となるように適宜モデルの修正に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた分子動力学シミュレーションのモデル構築を早い段階で完了し、複数の系について計算を実行済みである。また、次年度で予定していたらせん誘起力の理論値の算出にも取り組んでおり、それらについて実験値との整合性も確認できている。ゆえに当該研究は、計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築したシミュレーションモデルを用いて、ホスト液晶とキラルドーパントの種類を系統的に変えた系に対しても分子動力学計算を行い、らせん誘起力を求める。そして、剛直骨格を有する有機分子についても同様の手法でらせん誘起力が十分な精度で算出可能かについても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
支出を予定していた旅費が国内開催ということもあり、使用額が当初よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画以上に進展しているため、次年度においてより多くのシミュレーションを実行する予定であり、計算機サーバ関連の物品費として使用予定である。
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