2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21354
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
澤田 成史 北里大学, 感染制御科学府, 助教 (40726535)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RSV / キメラウイルス / 温度感受性 / コットンラット / 免疫原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、①MVの細胞外ドメインの代わりにRSVの細胞外ドメインを発現するRSV/MVキメラウイルス(キメラウイルス)の性状解析、②感受性実験動物であるコットンラットを用いてキメラウイルスの病原性の検討、③キメラウイルスの免疫原性の確認、を主に施行した。 ①に関して、キメラウイルスの親株である麻疹ワクチンAIK-C株は弱毒マーカーの1つとして生体内の温度付近の39℃では増殖しないという温度感受性の性状を持つ。キメラウイルスをVero細胞に感染させ、様々な温度における増殖能を検討したところ、AIK-C株と同様の温度感受性を保持していることが確認できた。 ②に関して、親株であるRSV臨床分離株とキメラウイルスをそれぞれコットンラットに経鼻感染させ、感染5日後の肺内感染性ウイルス量の測定、肺組織の病理観察を行った。キメラウイルスを感染させたラットはRSV感染ラットと比較して、肺内感染性ウイルス量が低く、気管支、肺胞領域における炎症所見が軽微であった。このことからキメラウイルスの病原性は親株のRSVより低いことが示唆された。この結果を踏まえてキメラウイルスの免疫原性を検討するために、コットンラットに筋注接種し経時的に血清を回収しRSVに対する中和抗体価の測定を開始した(③)。 以上の結果より、キメラウイルスは麻疹ワクチンの弱毒マーカーの1つとして確立されている温度感受性を保持し、病原性はRSVより低いことが確認できた。これはRSVに対する新規ワクチンとしての可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RSVの病原性マーカーは未だ解明されていないが、生体内の温度である38℃付近で増殖するウイルスは病原性が高いと考えられている。キメラウイルスの性状解析を行ったところ、親株であるAIK-C株の持つ39℃では増殖しない温度感受性の性状を同様に保持していることが確認できた。経鼻感染によるキメラウイルスとRSV臨床分離株との病原性を比較すると、キメラウイルスはRSVに比べ気管支周囲の炎症像が軽度であった。 以上の結果より、キメラウイルスはウイルスの弱毒化の指標の1つを保持し、病原性も親株であるRSVより低いことを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度施行した研究結果を踏まえ、引き続き感受性実験動物であるコットンラットを用いて免疫原性の検討を行う。事前研究において、組換え麻疹ウイルスは初回免疫後8週に再免疫を行うことにより免疫能が上昇することが確認されているので、キメラウイルスも同様に再免疫を行う。再免疫後さらに経時的に血清を回収し、RSVに対する中和抗体価の測定を行う。 中和抗体産生の有無を確認後、RSV臨床分離株を用いて免疫したコットンラットに経鼻感染させる。感染後、肺内感染性ウイルス量の測定、肺組織の病理観察等、感染防御能の評価を行う。 また、RSVの感染経路は主に鼻腔から気道のため、初期感染部位でウイルス感染を制御することは感染防御において重要な要因である。そこでラットにキメラウイルスを経鼻接種し免疫原性を確認する。また、並行して筋注接種群と比較検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画を実施するにあたり、購入予定であった実験動物のコットンラットが飼育室で使用匹数分を繁殖することができ、確保することができた。そのため当該年度の実験動物購入費をフラスコ、試薬類の購入にあてたため年度内に完了することが困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も動物実験を行うにあたりコットンラットの購入を計画している。このラットは国内で購入が困難なため海外から輸入しているため、購入時期により費用が変動する。生じた次年度使用額は実験動物購入費に使用する。
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