2016 Fiscal Year Research-status Report
ラット出血性ショックモデルにおける水素ガス吸入による生存率改善効果について
Project/Area Number |
16K21357
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松岡 義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70649938)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 水素ガス / 出血性ショック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,出血性ショックモデルにおける水素ガス吸入の有効性について検討した. 【方法】ラットに全身麻酔下でコントロールガス(21%O2+79%N2),あるいは水素ガス(1.3%H2+21%O2+77.7%N2)を吸入させた.総頸動脈から脱血し,平均動脈圧30mmHgを60分間維持した.その後,脱血量の4倍の生理食塩水で15分かけて輸液蘇生した.試験ガス吸入は脱血開始から輸液蘇生開始2時間後まで継続した.蘇生6時間後の生存率(両群N=10),蘇生2時間後までの血行動態解析・血液検査(両群N=5)を施行した. 【結果】①ショック維持のための必要脱血量は水素群の方が有意に多かった(コントロール群 vs 水素群:2.29 ± 0.43 vs 2.60 ± 0.40 ml/100g,p<0.05).②6時間後の生存率は水素群が有意に高かった(30% vs 80%,p<0.05).③出血量はコントロール群と比べて水素群でより多かったにもかかわらず,平均動脈圧は,蘇生直後から水素群で高く(70.6 ± 3.5 vs 94.0 ± 3.5 mmHg, p<0.05),その後2時間後まで水素群では維持されたが,コントロール群では蘇生終了後から徐々に血圧が低下していった.④pH,HCO3,乳酸,K,Creは蘇生開始時に両群間で差を認めなかった.しかし,蘇生2時間後にはコントロール群では,pHの低下,HCO3,乳酸,K,Creの上昇を認め,水素群では,これらの変化が抑制されていた.⑤蘇生2時間後のLVEDP,±dP/dtは両群間で差を認めなかった. 【結論】水素ガス吸入は,出血に対する血圧低下を抑え,輸液蘇性後の循環動態の安定化に寄与し,末梢循環不全の進展に伴う細胞死を抑制して,生存率を劇的に改善することが明らかとなった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに進行しており,順調に結果を出している.上記記載の研究実績をRESUSCITATION SCIENCE SYMPOSIUM SESSION TITLE: CONCURRENT SESSION: ORAL ABSTRACTS - BASIC SCIENCE/TRANSLATIONALで発表した.
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,残りの実験計画を進行させる.また,当初の計画に加えて,下記実験も追加する.ラット出血性ショックモデルにおける輸液蘇生時の水素ガス吸入併用療法の効果の検討.本年度の計画では,出血性ショック開始時点から水素ガス吸入を行なっていたが,輸液蘇生開始時点からの吸入で生存率改善効果が認められるかの検討を行う.上記のモデルは輸血蘇生モデルとともに,より実臨床に見合ったモデルである.先行研究の結果からも出血性ショックへの水素の有効性は疑いようがなく,来年度モデルである,輸血蘇生における水素ガス吸入モデルと蘇生開始時からの水素ガス吸入モデルにおいてもその有効性も認められる可能性は高い.そのため,特に実験方法の変更は行わず,予定していた通りに施行する.下記に実験計画を示す. SDラットを①コントール群,②水素吸入輸液蘇生群,③輸血蘇生群,④水素吸入輸血蘇生群に分ける.全身麻酔下に気管切開を施行し人工呼吸を行う.大腿動脈に観血的動脈圧モニタリング用,内頸動脈に脱血用にカテーテルを挿入する.観血的動脈圧,心電図,直腸温を実験期間を通して記録する. ショック期:15分かけて平均動脈圧30mmHgまで脱血し,脱血と返血を調整し,60分間維持する. 蘇生期:15分かけて輸液(脱血量の4倍の生理食塩水)蘇生あるいは輸血蘇生を行い,蘇生開始から120分間観察する.全群に試験用ガス(水素群: 26%酸素+1.3%水素,非水素群: 26%酸素)を蘇生開始から120分間吸入させる. 観察期:ガス吸入終了後4時間,蘇生開始から6時間の観察を行う.6時間後の生存率,血行動態,血液ガス,組織を評価する
|
Causes of Carryover |
概ね予定通りに進行しており、3614円の残額は誤差範囲内と考える。この残額と来年度の予算を合わせて計画を実施したい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の残額も少額であるので、当初の予定通り,残りの実験計画を進行させる.また,当初の計画に加えて,下記実験も追加する.ラット出血性ショックモデルにおける輸液蘇生時の水素ガス吸入併用療法の効果の検討.本年度の計画では,出血性ショック開始時点から水素ガス吸入を行なっていたが,輸液蘇生開始時点からの吸入で生存率改善効果が認められるかの検討を行う.上記のモデルは輸血蘇生モデルとともに,より実臨床に見合ったモデルである.先行研究の結果からも出血性ショックへの水素の有効性は疑いようがなく,来年度モデルである,輸血蘇生における水素ガス吸入モデルと蘇生開始時からの水素ガス吸入モデルにおいてもその有効性も認められる可能性は高い.そのため,特に実験方法の変更は行わず,予定していた通りに施行する.
|