2017 Fiscal Year Research-status Report
空中写真アーカイブを用いた古代地方官衙と交通路網の復元的研究
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16K21366
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
朝倉 一貴 國學院大學, 文学部, 助手 (60735512)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古代交通 / 古代官道 / 地方官衙 / 地理情報システム(GIS) / 空中写真 / 道路遺構 / 考古地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は業務多忙により若干の遅延と計画変更が生じている。本研究では、交通の中継地点として拠点となる官衙遺跡間の最小移動コスト回廊を算出することで、拠点間往来に最適な地帯を予測する。日本古代の交通路は規格的直線道であることから、官衙間を最小の移動コストで往来することを目的とした道路であると作業仮説を設定し、なぜそこに道路が敷設されたのかを明らかにする。本年は秦直道路線に関する既存路線復元を、地理情報システム(Geographic Information System)を用いた最小コスト解析により検証し、遠距離直達性を強烈に指向する作道思考(敷設論理)の解釈を試みる取り組みをはじめた。秦直道は甘泉宮(咸陽)から九原城(内蒙古自治区)間の約750kmに及ぶ大規模な官道である。史料には「始皇欲遊天下、道九原、直抵甘泉、迺使蒙恬通道、自九原抵甘泉、塹山堙谷、千八百里。道未就。」(『史記』蒙恬列伝)と記載され、その実態は黄土高原から砂漠を含む乾燥地帯を兵站輸送を主眼とする最短経路で結ぶ軍用道路で、東アジアにおける先駆的な直線道路とされる。目的地への到達を最小コスト化する論理は、その後の交通にも大きく影響し本邦古代交通路網にも共通することは言うまでもない。特に、鎮守将軍大野東人が陸奥国多賀城より出羽国雄勝までの道路を開削するにあたり「或尅石伐木、或填澗疏峯」(『続日本紀』天平九年四月戊牛条)と史料に残る陸奥出羽連絡路の記事と、時代・地域は違えど「山を塹り谷を堙ぐ」と表現される大規模な土木工事と共通するところは多々ある。 この他、一般市民向けの講演(「空から古道を探る-地理情報システムと空中写真を用いた考古地理学的研究の最新成果」)で研究成果の公開に取り組んだ。 補助事業期間延長承認申請書を学振に提出し、2018年3月20日付けで承認を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の根幹をなす最小コスト解析を用いた路線復元の再検証のため、秦直道路線における比較研究を実施したことで当初予定していた研究計画の一部に若干の変更が生じた。研究期間を延長し、さらなる成果の取り纏めを実施したい。
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Strategy for Future Research Activity |
事業期間延長により当初の計画通り、地理情報システムを用いた道路敷設地帯予測と空中写真画像解析による道路痕跡探索を総合し、部分的に研究成果のまとめと公開を準備していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、業務多忙により若干の遅延と秦直道における予備調査を実施した関係で若干の計画変更が生じ、事業期間延長を申請した事による。使用計画については最終年度であるため研究成果の取り纏めを進めるとともに、下記の点について明らかにすることを目指す。 a:発掘された道路遺構と地表痕跡の関連性 実際に道路遺構が発掘されている遺跡周辺の過去の空中写真を参照することで、埋没していた遺構が発掘調査以前に地表面にどのように現出しているのか、古代道路遺構に関連するとされている、地表痕跡(地割、ソイルマーク、クロップマーク)と、どのように関連しているのかを集成し類型化を行う。 b:地理情報システムを用いた道路敷設地帯の予測 交通の中継地点として拠点となる官衙遺跡間の最小移動コスト回廊をGISの空間分析で算出することで、拠点間往来に最適な地帯を予測する。 c:空中写真画像解析による道路痕跡の探索 米軍が戦後直後に撮影した空中写真資料群を用い、aの集成した道路痕跡構造類型をbの予測帯で探査し、道路痕跡を検出する。
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