2017 Fiscal Year Research-status Report
難民受け入れの法制度的基礎-ドイツにおける難民庇護と定住化支援を素材として
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16K21367
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大西 楠・テア 専修大学, 法学部, 准教授 (70451763)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 基礎法学 / 難民 / 定住化支援 / 統合政策 / 制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2016年から2017年にかけて行われたドイツでの庇護認定手続、難民の社会統合政策に関する立法状況について調査を完了することができた。2015年、メルケル首相がダブリン規則を一時的に停止して、難民をドイツに受け入れると発表したことをうけて、ドイツには100万人を超える難民が流入した。これに応じて、大量の難民申請を処理するため、また難民申請者の受け入れ態勢を整えるため、ドイツでは急速に立法がすすんだ。 とりわけ、2016年8月に新法である統合法が施行されたことで、2005年施行の移住法が設けた統合講習制度は社会保障など様々な分野と連携し、移民の速やかな社会統合を促進する新たな基盤が成立する。こうした立法状況について調査を進め、移民法制の現状を明らかにした点が本年度の研究実績である。 こうした法制度の整備によって、ドイツ政府は大量に流入した難民を労働市場に統合して、少子高齢化対策に活用したいと意図しているが、実際に難民の労働市場の統合が進展しているのかは今後の研究課題としたい。 以上の立法調査に加えて、本年度は国際シンポジウム報告やドイツでの講演会によって、研究成果の一部を発表し、フィードバックを受ける機会を多く得た。9月に開催された日独法学シンポジウムでは日本の移民法制およびドイツの移民・難民法を比較する報告を行い、「人の移動を制御する」法制度として一定の共通点があることを確認した。また、3月にはドイツのハレ大学で講演を行い、ハレ大学の移民・難民研究拠点のメンバー、入管実務に関わる行政裁判所の裁判官と意見交換する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツの立法状況についての調査を概ね完了させることができ、ここまでの研究成果を発表・フィードバックを得る機会を得た。加えて、行政実務についても、限られた範囲ではあるが実務家へのインタビューを行うことができた。他方、裁判例の分析についてはやや研究が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究成果を基礎として、平成30年度は①難民の定住化支援に関するドイツの立法について論文をまとめる、②裁判例と行政実務についてさらに調査を行う作業を進めたい。最後に、③日本とドイツの比較法を行う論文を執筆することで研究をとりまとめ、ドイツの外国人法専門誌に投稿したい。
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Research Products
(1 results)