2019 Fiscal Year Annual Research Report
Rights of Refugees in the Context of Integration
Project/Area Number |
16K21367
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
大西 楠・テア 専修大学, 法学部, 准教授 (70451763)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 難民 / 社会統合 / 包摂と排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツにおいてはメルケルによる難民受け入れ決定後、110万もの難民申請者が入国した(2015年)。メルケルの決定は当初は強い支持に支えられていたものの、難民申請者の受け入れに伴う混乱を受けて批判が高まり、難民認定率もまた低い水準だったことと合わせて、ドイツ社会においては「庇護権が濫用されている」との批判的言説が強まっていく。 これに対して、ドイツは難民申請者の入国制限・難民審査の効率化を進めるとともに、社会統合によって事態を収拾させることを試みた。すなわち、地方自治体レベルを中心として、難民の福祉システムへの包摂や労働市場への統合を支援する様々なプロジェクトが打ち出された。 本研究は、難民危機後のドイツ難民法制の展開が(同じく大量の難民が流入した90年代ドイツのそれとは異なり)包摂を意識した政策であることを明らかにし、少子高齢化・人口動態の変化の中で、難民の定住が将来への投資となるような政策の可能性を示した。ドイツにおいては、技能労働者の不足を補うための移民受け入れについては広く社会的な合意がみられるため、難民についても、技能労働者として労働市場への統合を進めてゆくという政策は、大量の難民流入による社会不安を取り除く方策の一つとして評価しうる。
他方で、地域における難民の社会統合の成否は未だ検討を要する部分も多い。難民を実際に受け入れる場として、難民申請中の住居を確保し、生活のあらゆる領域でのサポートを引き受けるのは地方自治体であるが、自治体の受け入れの能力を超える過重の負担がかかっている。本研究では、いくつかの自治体におけるモデルプロジェクトを検討したが、さらなる検討が必要である。
|
Research Products
(2 results)