2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K21376
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Research Institution | St. Luke's International University |
Principal Investigator |
平林 真介 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 常勤嘱託 (50769635)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Cancer predisposition / Maffucci syndrome / ALL |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は小児領域において遺伝性症候群を背景にもつ個体からのがん化の機序を解明するのを目的とし,多数例を検討できない希少症候群における造血器腫瘍を対象とした.平成28年度は希少症候群の集積とともにターゲットシーケンスとMLPA法による遺伝子解析を計画した.自施設での網羅的遺伝子解析の導入は遅延しているため,協力施設の支援によりMaffucci症候群に合併した急性リンパ性白血病の解析を終了した.Maffucci症候群ではIDH1またはIDH2変異の体細胞モザイクが正常組織にはごく低頻度に,軟骨腫,血管腫には高頻度に生じることが報告されている.また悪性腫瘍の合併が知られており,これまでMaffucci症候群に合併した膠芽腫や急性骨髄性白血病の発生機序についての報告がある.しかし、Maffucci症候群に急性リンパ性白血病を合併しかつ分子生物学的な解析を行われた症例は存在しなかった.今回,我々の解析において,急性リンパ性白血病細胞においてIDH1変異に加えて,急性リンパ性白血病の発症機序に深く関わる異常としてKRAS変異,IKZF1欠失を同定した. これまでの報告と合わせMaffucci症候群の造血幹細胞において,IDH1変異を背景にKRAS変異やIKZF1欠失の協働が急性リンパ性白血病発症に関与することが考えられる.Maffucci症候群は白血病を含むCancer predisposition syndromeの一つであることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希少症候群の集積は進んでおり,Maffucci症候群のほか以下の希少症候群が集積されている. MDSを合併したPearson症候群,MDS/AMLを合併した染色体脆弱性のある1例,悪性リンパ腫を合併したRB1遺伝子異常,フィラデルフィア染色体急性リンパ性白血病を合併したダウン症候群などである.自施設内での検体集積システムを立ち上げ,倫理委員会の承認を経て,同意の得られた症例の検体保存を開始した.診断時だけではなく経時的な検体保存が可能であり,DNAやRNAのみならず凍結細胞も含めて保存しており,将来的な機能解析に役立てることが可能である.解析についてはターゲットシーケンスやMLPA法による遺伝子解析の構築を進め,実際にデータ解析を行っている.これまでに得られた知見について平成28年10月の第78回日本血液学会学術集会で口演発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,自施設での網羅的遺伝子解析の導入が遅延しており,引き続きその推進を図る.一方で,協力施設の支援を得ながら平成29年度に網羅的遺伝子解析については集中的に解析を進める予定である.個々の希少症候群の国内での学会発表を引き続き行い,臨床家との討議を行う予定である.平成28度に解析の終了したMaffucci症候群については,海外での学会発表と論文化の準備を行っているところである.現在,遺伝子解析の進歩によりCancer predisposition syndromeが注目されている状況にある.研究代表者においては学会雑誌の総説などを通して希少症候群と造血器腫瘍について知識の普及を進める予定である.
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Causes of Carryover |
平成28年度においては自施設での網羅的遺伝子解析導入が遅延した影響がある.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においては集積された検体を用いて集中的に網羅的遺伝子解析を行う予定である.
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Research Products
(2 results)