2016 Fiscal Year Research-status Report
環境責任論の憲法学的考察――人権理論と国家理論に基づく原因者責任
Project/Area Number |
16K21378
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
藤井 康博 大東文化大学, 法学部, 准教授 (40581666)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 憲法 / 環境法 / 環境憲法 / ドイツ法 / 事前配慮 / 比例原則 / 国家 / 責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境保護に関する責任を憲法学の視点から解明し、そこから環境法政策への示唆を見出すことである。その目的達成へ向けては、憲法学における人権理論と国家理論に基づく基礎・応用を探究する。特に考察対象として、汚染者負担原則ないし原因者責任原則が法原則として適切か否か精査し、この原則を憲法学の人権理論と国家理論から基礎づける。そして、以上から、具体的には例えば、リスク責任、原子力賠償責任、拡大生産者責任、環境損害責任などの法政策を提言することをねらいとしている。
初年度は、まず、本研究と関連する環境リスクに対する事前配慮責任や(論証責任を含む)「立証責任」を加筆したこれまでの研究成果をまとめ公表した。そこでは、人格権(精神も関わる生命権・身体権)をめぐる三段階審査、特に比例原則を重視した(いわゆる環境比例原則ではなく)。とりわけ、原子力法政策の、目的審査における違憲性のある目的、手段審査における必要性審査(他の発電手段リスクの必要最小限性の予測)、均衡性審査批判を論じた。 また、本研究の基礎となる国家理論上の責任を探究すべく「現代ドイツ憲法学における国家目的「自由」「安全」「生命」」について執筆した(印刷中)。そこでは「国家なき国法学」に抗する立憲国家目的「自由」が重視された。 さらに、概説ではあるが、原因者責任を一部含む「環境と未来への責任」について執筆した(印刷中)。そこでは、実質的意味の環境憲法についても鳥瞰した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
憲法基礎理論における責任の解明については、考察を1歩進め、初年度のうちに一部を執筆することができた。 それゆえに、初年度としては、おおむね順調に目的を達成していると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、日本とドイツの環境法の原因者責任の理論的・実証的分析を行う。 特に、危険・リスクの原因となる者は責任を負うとする原因者責任原則を憲法学的に考察する。関連して、原子力規制の研究についても取り組む。
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