2017 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌に対するマクロライド系抗菌薬を用いた新規「アミノ酸飢餓誘導療法」の確立
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16K21387
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
平澤 一浩 東京医科大学, 医学部, 助教 (90772161)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オートファジー / マクロライド系抗菌薬 / 小胞体ストレス / 頭頸部癌 / アミノ酸トランスポーター / EGFR TKI |
Outline of Annual Research Achievements |
以前より報告者らは、マクロライド系抗生剤のオートファジー阻害活性に着目し、その臨床応用を検討してきた。アジスロマイシン(AZM)、クラリスロマイシン(CAM)を頭頸部癌細胞株CAL27、Detroit562に添加したところ、通常培養条件化では細胞毒性がほとんど発現されないにもかかわらず、アミノ酸飢餓培地下では著明な殺細胞効果が発揮されることを明らかにした。一昨年度はその細胞死の誘導機序を追及した。その結果、アミノ酸飢餓でマクロライドによりオートファジーを阻害すると、細胞内のアミノ酸プールが枯渇しCHOP誘導を介してアポトーシスを誘導することが明らかとなった。 平成29年度は臨床応用を踏まえてまず、LAT1阻害剤であるJPH203を用い、AZM、CAMとの併用による抗腫瘍効果の検討から開始した。しかし、JPH203の頭頚部癌細胞への殺細胞効果およびマクロライドとの併用による殺細胞効果の増強が検証されなかったため、当初の計画を変更し、EGFRの分子標的薬ゲフィチニブ(GEF)のアミノ酸飢餓条件下での効果を検討した。既に筆者らのグループは、GEFはオートファジーを誘導し、マクロライドとの併用により殺細胞効果が増強することを報告している(BBRC 2017)。 頭頸部癌を含む各種癌細胞株を10%FBS添加アミノ酸飢餓培養下でGEFを添加すると、オートファジーの著しい亢進とともに殺細胞効果が顕著に増強した。また、この増強効果は必須アミノ酸添加によりほぼ完全に消失した。興味深いことに、この条件下で誘導される細胞死は、アポトーシスでもオートファジー細胞死でもなく、RIPK-1活性化を伴うネクロプトーシス様細胞死であることが明らかとなった。オートファジーの過剰な亢進によりMLKLを含む細胞死を実行する機能タンパク質の分解が亢進することにより、このような変則的な細胞死が誘導されたと予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の残りであった「アミノ酸トランスポーター阻害剤とAZM、CAM 併用時の抗腫瘍効果の増強」の検証は行うことができた。しかし、LAT1の阻害とマクロライドの併用での殺細胞効果増強は示せたものの、JPH203自体のCAL27、Detroit562への効果が認められず、当初予定していたin vivoでの検討へも推移できなくなった。そこで,当初の研究計画を若干変更し、飢餓条件下でのEGFR TKIの抗腫瘍効果に関する検討を行い、一定の研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロライド抗生剤は,アミノ酸枯渇状態でオートファジー阻害活性を介して抗腫瘍効果を発現する。また、EFGR TKIであるゲフィチニブ(GEF)もアミノ酸飢餓培養化でネクロプトーシス様細胞誘導の増強が観察された。そこで,飢餓条件下でのGEFに対するマクロライドの効果を検証する方向で展開したい。
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Causes of Carryover |
(理由) 物品費(消耗品費用)として計上していたものが残金として繰り越された。 (使用計画) 次年度(平成30年度)、全額使用する予定である。
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Research Products
(3 results)