2016 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤誘発体重減少に対するエイコサペンタエン酸の影響
Project/Area Number |
16K21401
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉澤 一巳 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (00711532)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シスプラチン / 体重減少 / 栄養療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、抗がん剤により誘発される食欲不振および体重減少の機序解明と栄養療法としてのエイコサペンタエン酸(EPA)の有用性について検討することである。そこで今年度は、シスプラチン(CDDP)誘発食欲不振モデルマウスに対する栄養剤の有用性を検討し、さらにはトレッドミルを用いた走行実験におけるCDDPの影響を検討した。実験には C57BL/6J 雄性マウスを用い、CDDP(10 mg/kg)を腹腔内投与することで食欲不振モデルマウスを作製した。このモデルマウスに対して、糖質主体栄養剤投与群、脂質主体栄養剤投与群、グルコース投与群ならびにオリブ油投与群を設定し、体重変化率と摂餌量の推移を評価した。また、トレッドミルを用いて疲労の評価を試みた。CDDP誘発食欲不振モデルマウスは、有意な摂餌量の低下とそれに伴う体重減少を示した。それに対して、糖質主体栄養剤およびグルコース投与群では、摂餌量の増加と体重減少の抑制が認められた。しかしながら、脂質主体栄養剤およびオリブ油投与群ではCDDPによる食欲不振は改善されなかった。また、トレッドミルでの走行距離は、CDDPにより著しく減少し、糖質主体栄養剤およびグルコース投与群ではその走行距離減少が改善した。本研究では、EPAを含有し栄養組成が異なる2つの栄養剤を用いて検討を行った。その結果、CDDP誘発食欲不振と体重減少の早期回復には、脂質よりも糖質の方が有用である可能性が示唆された。また、CDDP誘発食欲不振モデルマウスの走行持久力の低下(疲労)の改善にも糖質の摂取が有用であるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、抗がん剤により誘発される食欲不振および体重減少の機序解明と栄養療法としてのエイコサペンタエン酸(EPA)の有用性について検討することである。今年度の研究ではCDDPによる摂餌量の低下、体重減少、さらには走行持久力の低下(疲労)を見出すことができた。しかしながら、これらのCDDPによる副作用はEPA含有栄養剤の投与では回復しなかった。今後はEPAの骨格筋分解抑制作用に着目し、CDDP誘発食欲不振モデルマウスが呈するサルコペニア(骨格筋量低下)に対するEPAの影響を中心に検討を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、予定どおりCDDP誘発食欲不振モデルマウスの脳および骨格筋の組織標本を用いた筋たんぱく質分解因子、摂食関連因子、ATP産生能(ミトコンドリア機能)に関する分子生物学的検討を行い、CDDP誘発食欲不振モデルマウスの食欲不振および体重減少の機序解明と栄養療法としてのエイコサペンタエン酸(EPA)の有用性についての詳細な検討を行う予定である。さらに、今年度の検討により三大栄養素のうち、糖質の投与がCDDP誘発食欲不振モデルマウスの呈する走行持久力の低下(疲労)を改善することを初めて見出した。このことから、次年度も引き続きEPAだけでなく糖質、脂質、アミノ酸の影響についても合わせて検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の研究ではCDDPによる摂餌量の低下、体重減少、さらには走行持久力の低下(疲労)を見出すことができた。この研究ではすでに所有している試薬を使用して、主に実験動物を購入した。残金が少額であったため、次年度へ繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、予定どおりCDDP誘発食欲不振モデルマウスの脳および骨格筋の組織標本を用いた筋たんぱく質分解因子、摂食関連因子、ATP産生能(ミトコンドリア機能)に関する分子生物学的検討を行い、CDDP誘発食欲不振モデルマウスの食欲不振および体重減少の機序解明と栄養療法としてのエイコサペンタエン酸(EPA)の有用性についての詳細な検討を行う。従って、少額の残金を含め、組織標本用の実験動物やマイクロアレイ解析用の試薬を購入する予定である。
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