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2016 Fiscal Year Research-status Report

正統医学と代替医療の境界設定にみる近代医学の形成

Research Project

Project/Area Number 16K21422
Research InstitutionMeiji University

Principal Investigator

黒崎 周一  明治大学, 文学部, 兼任講師 (10772246)

Project Period (FY) 2016-04-01 – 2019-03-31
Keywordsイギリス史 / 医学史 / 境界設定 / 科学的医学
Outline of Annual Research Achievements

(1)ロンドンで11日間にわたる史料調査を行った。主にメトロポリタン・アーカイヴスにおいて,ロンドン・ホメオパシー病院の19世紀後半における運営状況に関する史料を収集した。差し当たり注目すべき史料として、病院の年次報告書が挙げられる。この報告書から,病院が1870年代以降の病院日曜基金に参加していたことが明らかになった。病院日曜基金とは,特定の日曜日に,キリスト教の各宗派の教会やユダヤ教のシナゴーグを訪れた人々から任意の寄付金を募り,これを集計て市内の病院に分配する取り組みであり,これに参加していたということは,正統医学によるホメオパシーの排斥,周縁化について,地域社会がそれを額面通りに受け容れていたとは限らないことが示唆される。。
(2)本研究の一環として,論文「ハーネマンとは何者か? ―ヴィクトリア朝イギリスにおけるホメオパシーの受容と再構築―」『駿台史学』第158号を執筆した。この論文では,イギリスのホメオパシー医たちが,ホメオパシーの創始者ハーネマンが体系化した理論を取捨選択しながら受容し,さらにはハーネマンのイメージを自分たちに好ましい形で,すなわち「科学的治療の創始者」として構築しようとしていたことを明らかにした。
(3)本研究の一環として,博士学位請求論文「医学における『正統』と『異端』 ―ヴィクトリア朝イギリスにおける科学的医学の形成―」を執筆した。従来の研究は,ホメオパシーと正統医学との対立関係から生まれる境界線が,科学的医学の輪郭を浮かび上がらせていたと主張してきた。これに対しこの論文では,そうした対立による境界設定の動きを「セクト主義」と批判し,より「寛容な」態度こそが科学的医学には必須と主張した人々の存在を明らかにすることで,科学的医学の形成過程を再検討した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

ロンドンでの史料収集は,当初の予定よりも多少期間を短縮したが,ホメオパシー病院の運営の内実を示す史料が見つかるなど,一定の収穫を得ることはできたと考えている。また研究成果の一部について,雑誌論文と博士学位請求論文という形でまとめられたことも,概ね順調に進展していると考えられる理由である。

Strategy for Future Research Activity

平成29年度は,まずオンライン史料を用いた新聞報道などの分析を行う。近年,英国図書館は18世紀以降の全国各地の新聞の全面的なデジタル化を推進し,これをオンラインのアーカイヴスとして広く一般に提供している。このアーカイヴスを利用することで,全国各地で見られた,正統医学とホメオパシーとの対立の内訳を把握することができるだけでなく,両者の対立に関する一般紙の見解,ひいては一般社会の反応を垣間見ることが可能となる。
またこの他にも,明治大学図書館が所有している,全国紙『タイムズ』のデジタル・アーカイヴスやイギリス議会史料をオンライン化した『ブリティッシュ・パーラメンタリー・ペーパーズ・オンライン』なども用いる。これらの取り組みによって,ホメオパシー関連の報道に対する全国レヴェルでの世論の反応や,ホメオパシーを非合法化しようとする正統医学の取り組みに,イギリス議会が示した反応を分析していく。
加えて海外での史料調査も検討している。現時点で候補に挙がっているのは,リヴァプールである。19世紀のリヴァプールは,ホメオパシーを支持する医師の数がロンドンに次いで多く,それゆえに正統医学との軋轢が絶えず,地元の医師会ではホメオパシー支持者の排斥も行われていた。そこでリヴァプール文書館での史料収集を計画している。この文書館には,ホメオパシー治療を用いた病院・診療所の年次報告書や,理事会の議事録が所蔵されており,これらの史料から病院・診療所の運営方針や実際の治療の状況について明らかにできれば,地域社会の中で,ホメオパシーがどのような戦略や実践に基づいて科学的正当性を得ようとしたかが理解できるものと考える。

Causes of Carryover

今年度に購入する予定であったパソコンの購入を延期したため。

Expenditure Plan for Carryover Budget

パソコンの購入に充てる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2016

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Acknowledgement Compliant: 1 results)

  • [Journal Article] 「ハーネマンとは何者か? ―ヴィクトリア朝イギリスにおけるホメオパシーの受容と再構築―」2016

    • Author(s)
      黒﨑周一
    • Journal Title

      『駿台史学』

      Volume: 第158号 Pages: 51-73

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant

URL: 

Published: 2018-01-16  

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