2016 Fiscal Year Research-status Report
陽電子対消滅によるサイト選択的イオン脱離過程の研究
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16K21424
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
立花 隆行 立教大学, 理学部, 助教 (90449306)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 陽電子消滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
陽電子ビームの照射によって起こるTiO2結晶表面でのイオン脱離現象の機構解明を目的として、脱離イオン収率の入射エネルギー依存性を測定した。陽電子の入射エネルギーが10eVから500eVの範囲において、イオン脱離収率はほぼ一定であることが明らかになった。この結果から、イオン脱離が主として陽電子と表面の電子との対消滅で起こることがわかった。 また、陽電子入射と陽電子入射によるイオン脱離現象を観察するために、電子銃本体と電子線をパルス化するための電子回路を開発した。これにより、パルス幅30ns以下のパルス電子ビームの生成に成功した。電子銃を装置に取り付けて陽電子入射と陽電子入射によるイオン脱離を観測したところ、脱離イオン収量や脱離イオン種が大きくことなることがわかった。陽電子消滅の場合、特定の元素のイオンについて電子衝撃よりも1桁以上高い効率で脱離が起こることが明らかとなった。これらの結果は、固体に入射した陽電子の表面局在性や消滅サイト選択が反映されたと解釈できる。 さらに次年度の実験準備として、試料ガス導入機構を製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱離イオン収率の入射エネルギー依存性の測定,パルス電子線の生成システムの開発,試料ガス導入系の製作について,おおむね計画通りに進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
製作した試料ガス導入系を測定容器に組み込み、異種分子が吸着した系からの脱離イオンの観測を進める。同時に電子刺激脱離の測定もおこない、吸着系に対する陽電子刺激脱離との違いを明らかにする。さらに、イオン脱離を誘起する対消滅が起こった際に放出されるガンマ線を検出し,そのエネルギー分布の測定から脱離過程に関する情報を引き出すことを試みる。
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Causes of Carryover |
高出力半導体スイッチを購入して電子ビームのパルス化機構を製作する予定であった。しかしながらは当初の計画よりもパルス幅を狭める必要があることが判明したために、そのスペックを満たす回路を自作することにした。使用した電子部品自体は購入予定であった半導体スイッチよりも安価であった。また、電子銃を製作する予定であったが、他の装置に使用していた電子銃を譲ってもらうことができた。そのために部品の加工と消耗品の購入のみで電子銃を組むことができた。これらの理由により繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
同一の試料で電子入射と陽電子入射によるイオン脱離の観測を可能にするために、直線導入機構を購入する。試料ガスを購入して、異種分子吸着系からの脱離の観測を進める。さらに、脱離イオンと消滅ガンマ線の同時計測をおこなうための測定系を新たに立ち上げる。そのために、PCと通信可能なオシロスコープを購入する。
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