2016 Fiscal Year Research-status Report
民間ユネスコ運動の形成と展開―戦後日本における平和運動の起源
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16K21438
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
齋川 貴嗣 早稲田大学, 政治経済学術院, 助教 (30635404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ユネスコ / 戦後日本 / 平和運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1945年の敗戦から1951年までの時期を対象に、日本各地において展開した民間ユネスコ運動を歴史的に分析し、日本とユネスコとの関係の出発点を検討するとともに、戦後初期日本の平和運動の内実を明らかにすることを目的とする。 研究初年度の平成28年度は、民間ユネスコ運動の「民間性」に着目し、研究を行った。民間ユネスコ運動は、敗戦後の混乱の中、各地で自然発生的に生まれ、当初から組織だった運動として展開されたわけではない。こうした一種の無秩序さこそ、日本の民間ユネスコ運動の特徴の一つであり、それゆえ、戦後最も早い段階で国民的な平和運動として全国的に展開することが可能になったと考えられる。 以上を踏まえ、初年度は次の問題の解明を目指した。第一に、敗戦後の戦禍に苦しむ日本人がユネスコに惹きつけられたのは何故なのか。第二に、こうした民間でのユネスコ運動の高まりを、GHQならびに日本政府はどのように理解し、いかに対処しようとしていたのか。 これらの問題を明らかにするため、本年度中頻繁に国会図書館憲政資料室にて日本占領関係資料の調査を行った。特に、民間ユネスコ運動を所管した民間情報教育局(CIE)関係文書を集中的に調査し、資料を収集した。また、日本の民間ユネスコ運動の原点とも言える仙台ユネスコ協会を訪問し、同協会設立時の資料の調査を行った。さらに、広島大学文書館にて森戸辰男関係文書を閲覧し、特にユネスコ関係の文書の収集を行った。森戸辰男はユネスコ国内委員会で重責を担った人物であり、同文書は初期民間ユネスコ運動におけるユネスコ認識を理解する上で非常に重要であると考えられる。以上の調査から得た資料の分析を進め、論文として発表する準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、本年度予定していた資料調査はほぼ実施することができた。校務の都合上、パリのユネスコ史料館での調査は実施できなかったが、その代わり、仙台ユネスコ協会ならびに広島大学文書館所蔵森戸辰男関係文書の調査を行うことができた。ユネスコ史料館での調査は次年度以降実施予定であり、研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は、おおむね計画通りに進捗している。したがって、本年度実施できなかったユネスコ史料館での調査を早い段階で実施する一方、当初の計画通りに研究を遂行するつもりである。
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Causes of Carryover |
購入予定であった書籍が品切れとなり、別の書籍を購入したため差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入代に充てる予定である。
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