2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Formation and Development of the UNESCO Movement in Japan: A Origin of the Postwar Japanese Peace Movement
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16K21438
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
齋川 貴嗣 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (30635404)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ユネスコ / 国際文化交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の最終年度の成果として、主に3点指摘したい。 第一に、パリのユネスコ資料館で収集した一次資料の分析を通して、ユネスコ理念の形成過程が明らかになったことである。従来のユネスコ史研究において、連合国教育大臣会議(CAME)を中心に検討がなされる一方、ユネスコの母体となった国際連盟知的協力国際委員会(ICIC)についてはその形式的継承関係を指摘するにとどまってきた。しかしながら、CAME議事録や設立時期のユネスコ内部資料を詳細に検討することで、ICIC関係者がCAMEならびにユネスコ憲章作成会議に参加し、特にその理念形成において主導的な役割を果たしていたことが明らかになった。 第二に、ユネスコ資料館および台北の中央研究院近代史研究所档案館の一次資料を検討することで、ユネスコ設立前後の時期における中国の主体的な関与が明らかになった。中国の対ユネスコ政策の実務を担当したのは、戦前期にICICとの協力関係を推進した人々であり、この点でもICICとユネスコとの継続性を見ることができる。これまでユネスコ成立史は主に英・仏の主導権争いという点から描かれてきたが、中国の視点を導入することで、ユネスコ史をグローバル・ヒストリーへ開いていく一つの契機になると考えられる。 第三に、外交史料館所蔵外交記録や各地のユネスコ関係資料の調査を通じて、日本のユネスコ運動は当初から一体的なものではなく、各地のユネスコ関係団体がそれぞれの思惑から独自に参加していたことが明らかになりつつある。この点に関しては、さらなる資料の分析が必要であるが、仙台ユネスコ協会から国民的な運動を経て日本ユネスコ国内委員会へと至るという単線的な理解は修正されることとなるだろう。 これらの知見について、最終年度に論文として発表できなかったことは悔やまれる。しかし、既に論文執筆は開始しており、可能な限り早い段階で発表したいと考えている。
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