2016 Fiscal Year Research-status Report
客観的指標に基づく点字ユーザの試験時間の設定--点字読書チャートの応用--
Project/Area Number |
16K21444
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
大島 研介 神奈川大学, 人間科学部, 非常勤講師 (80636811)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 点字 / 点字受験 / 視覚障害 / 読書速度 / 客観的指標 / 触覚 / 実験心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最初の目標は、テスト実施状況と同じである黙読での読書速度を客観的に評価することであり、黙読用点字読書チャート(以下、黙読チャート)の開発を行う。黙読チャートの開発に向け、音読用点字読書チャート(以下、音読チャート)の改善点の再検討を行った。 (1)音読チャートの再分析:黙読チャートの開発に活かすため、大島(2016)で作成した音読チャートの改善点の洗い出し、および再分析を実施した。検討の結果、文章レベルの主要な説明変数の不足、個人レベルの説明変数が失明年齢以外の寄与の低さ、音読チャートの元となる文章群の特性の偏りが改善点として明らかになった。 (2)文章特性の説明変数の再検討のための文献調査:点字の文章難易度の研究が少ないため、墨字の読書における文章難易度評価や読みやすさに関する文献を中心に文献調査を実施した。英文の墨字の読みやすさの指標は確立されているものの、日本文では確立した指標がまだなく、様々な変数を用いた指標が提案されていることが明らかになった。たとえば、音読チャートでは文章レベルの説明変数の1つとして、語彙レベルを重視した文章難易度の指標を採用したが、点字読書では同音異義語の推測などの点からも漢語と和語の区別といった種別の影響を強く受ける可能性が考えられ、説明変数の候補の絞り込みが必要であることが確認できた。 (3)個人レベルの説明変数の再検討のための文献調査:音読チャートでは年齢などの一般属性に加え、知覚特性、認知特性に関する説明変数を採用していた。これらの特性の再検討を行った。たとえば、音読チャート時には点字読書に関連するといわれているワーキングメモリ指標として数唱課題を採用していたが、リーディングスパンテストのような二重課題を強いるタスクの方が、点字読書への影響が大きく、適切な指標である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度のうちに、黙読用点字読書チャートの開発のためのデータを取得する実験を開始する計画であった。しかし、音読用点字読書チャートの再検討を行った結果、指標の有効性を高めるためには説明変数の見直しが必要であることが明らかになり、そのための文献研究を実施した。これに加え、新たな指標のための測定手法の検討・開発を進めた関係 で実験の開始が遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施した説明変数の再検討により、説明変数の候補が上がっている状況である。今後は候補となる説明変数の絞り込み、および測定のための手法の精査を行った上で、黙読用点字読書チャートの開発のための実験の実施を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に開始予定であった実験の実施が遅れており、参加者に支払う予定の謝金、データ処理時にかかるアルバイト謝金が次年度に先送りになったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、初年度に計画していた実験を実施し、参加者への謝金、およびデータ処理、分析時のアルバイト謝金として使用予定である。
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