2016 Fiscal Year Research-status Report
企業価値向上に寄与するガバナンス構造に関する実証研究
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16K21448
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Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
伊藤 晴祥 国際大学, 国際経営学研究科, 准教授(移行) (30710678)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 企業の所有 / コーポレートファイナンス / 株主資本価値 / マネジメントバイアウト / アンダーバリュエーション / 情報の非対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、マネジメントバイアウト(MBO)におけるガバナンス構造の変化と企業価値への影響について研究を行った。2001年から2009年までに行われたMBO企業は54社(上場企業に限定)を分析対象とした。分析の結果から、日本のMBOを行った企業の特徴として、以下の8つの項目があげられる。1.経営者あるいは取締役会の役員に株式がすでに集中している(中央値で29.4%、アメリカでは5.9%)。2.簿価時価比率によれば、割安な企業ほどMBOを行っている。3.割安な企業ほどMBO時点で高いプレミアムを支払ってMBOを行っている。4.日本の企業の場合、MBO後にキャッシュフローなどの収益性の改善が見られない。5.MBOを行った企業の株式はMBO以前にすでに、経営者や役員に集中しているが、MBO後にさらに株式が集中している。6.MBO時に支払ったプレミアムの平均値は、49.0%、中央値は、54.6%であり、アメリカなど諸外国のそれと比較しても遜色のない、高いプレミアムが支払われている。7.MBOを通じてMBO前及びMBO後の投資家に対して、平均で116.3%のリターンがもたらされている。8.MBO後の企業にも投資をした、内部情報を知っている経営者のMBO時点での株式割合は、22.4%であり、投資をしなかった経営者の同株式割合が0.37%であった。以上のことから、日本において、MBOは、エージェンシー問題などの解決というよりも、情報の非対称性に起因する、アンダーバリュエーション(株価が割安であること)がモチベーションになっていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マネジメントバイアウト(MBO)に関する研究は、平成28年度をめどに完了の予定であったが、Journal of Finance(ファイナンス分野では1番よい学術雑誌)及びJournal of International Business Studiesに投稿をしたところ、どちらからも採択されなかったため、論文を大幅に改善して、ファイナンス分野において他のトップジャーナルである、Journal of Financial and Quantitative Analysis(ファイナンス分野では4番目によい学術雑誌)への再投稿を目指して、論文を大幅に改善をしているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現行のMBOに関する論文を改善し、Journal of Financial and Quantitative Analysisへの投稿をできるだけ早い時期に行う。2回非採択とされてしまった原因として、ストーリーが査読者にとって興味深いものではなかったと考えられるため、アンダーバリュエーションの要因とガバナンス構造との関連について分析を進め、あるガバナンス構造の場合には、例えば、外部の株主が多い場合、社外取締役などが多くの株式を持っている場合、個人株主(経営者や役員以外)の株式割合が多い場合などに、アンダーバリュエーションが起きているかなどを検証していく。 MBO論文を学術雑誌に提出後は、日本特有のガバナンス構造、例えば、持ち合いや社外取締役、メインバンク制、GPIFなどの新たな年金基金が株式を保有している場合など、これらのガバナンス構造がいかに企業価値へ影響を与えているかについて分析を進める。
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Causes of Carryover |
MBOに関する研究が査読結果が思わしくなかった結果、旧来のデータベースを利用した研究が継続しており、新しいデータを利用した分析を行うことが出来なかったため、データベースの購入をしなかった分、次年度への繰越額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、前年度に利用をできなかった分と含めて、株主構成、役員構成、財務情報などのデータセットを購入し、ガバナンス構造と価値創造プロセスに関する研究に従事する予定である。海外での学会発表も当初の予定では、今年度に行う予定であったが、次年度以降に行うため、当年度の使用計画は主にデータセット、文献、研究会参加費、人件費などに充てる予定である。
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