2017 Fiscal Year Research-status Report
「縁」概念に着目した宗教的共同性の研究:チベットのボン教徒を中心に
Project/Area Number |
16K21449
|
Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
小西 賢吾 金沢星稜大学, 教養教育部, 講師 (80725276)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | チベット / ボン教 / 共同性 / 縁 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバルに展開するチベットの宗教文化を主な対象に、宗教を実践する人びとの間に形成される共同性を「縁」概念に着目して解明することを目的としている。平成29年度においては、宗教的共同性に関する先行研究文献や、チベット仏教およびボン教の僧侶による著作の収集と分析を継続するとともに、ボン教僧院におけるフィールド調査を実施した。 文献調査においては、チベットの高僧の伝記の精読を行い、その中における「縁」「因果」「業」といったことばの用例を収集した。今年度はボン教僧侶に加えて「ツォンカパ伝」や「ミラレーパ伝」など、チベット仏教の重要人物の伝記も分析対象とした。そこでは、人生の転機となる出来事や出会いは、仏教/ボン教の教えとの縁によってもたらされるものであり、過去の行為に起因するものであることが示唆されるが、その具体的な過程は明示されない、もしくは凡人には不可知とされることが多い。そのため、この過程を解釈する際に、土着のものを含めた多様な概念が入り込む余地があると考えられる。 フィールド調査においては、中国四川省成都市のボン教徒、および松潘県のボン教僧院を対象とした調査を行った。とくに後者においては、研究代表者が2005年以来調査を継続しているS僧院(仮称)集会堂改築に伴う落慶法要の参与観察を行い、参列者と僧院のつながりについての資料を収集した。並行して、ボン教僧侶のライフストーリー調査を行った。ボン教の僧院は僧院長の系譜に基づく血縁関係と、宗教的空間を共有する地縁関係を基盤とする複雑なネットワークを構築しているが、それに加えて近年個別の地域性をこえた「ボン教徒」としてのつながりが大きな役割を果たしていることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度に構築した理論的視座を踏まえたフィールド調査を行うことを目的とし、予定していた通りのフィールド調査を行い、文献調査を含めてチベットにおける「縁」概念の用法をめぐる知見を整理することができた。また、本研究に関連する成果として、論文3篇を公表した。このため、昨年度の遅れを挽回し、当初の計画通り次年度の研究を実施できる見通しがたったと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見を踏まえて、引き続き文献調査およびフィールドワークによる研究を進めていくとともに、成果の公表につとめる。特に、地域を越えて移動した僧侶のライフストーリーについて、積極的に一次資料の収集を行っていく。また、宗教的共同性をめぐる考察を、他の宗教や哲学・思想との対話の中で深化する必要性が明確になったので、本研究計画の範囲内で関連する調査研究を進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
今年度実施した現地調査にかかる経費が当初の想定よりも低く抑えられたこと、また購入を予定していた文献資料の中に本年度内に入手できなかったものがあったことにより、次年度使用額が生じた。次年度使用額と当初の請求額をあわせ、フィールドワークおよび文献調査において、今年度入手できなかった資料の入手のために使用する計画である。
|
Research Products
(8 results)