2020 Fiscal Year Research-status Report
「縁」概念に着目した宗教的共同性の研究:チベットのボン教徒を中心に
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16K21449
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
小西 賢吾 金沢星稜大学, 人文学部, 准教授 (80725276)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チベット / ボン教 / 縁 / 共同性 / 僧院 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバルに展開するチベットの宗教文化を主な対象に、宗教を実践する人びとの間に形成される共同性を「縁」概念に着目して解明することを目的としている。2020年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初昨年度末に予定していた調査が実施できなかったため、研究期間を延長したものの、引き続き状況の改善が見られなかったため、これまでに本研究にかかる現地調査・文献調査で収集した資料の分析とまとめ、公刊に向けた作業に集中した。文献調査においては、チベットの高僧の伝記の精読を継続し、その中における「縁」「因果」「業」といったことばの用例のまとめを継続した。また、縁と共同性に関する文献分析を哲学、宗教学分野にも拡大し、縁を仏教的な文脈にとどまらない形でコミュニティ論と接続するための考察を進めた。また、前年度までのフィールド調査で得られた資料を、改めて多角的な視点から分析し、先行研究に位置づける作業を行った。 以上からは、チベットの宗教実践をめぐるつながりの生成のメカニズムが、単にグローバルとローカルのせめぎ合いという枠組みでとらえられるものではなく、多様な背景を持った人びとの偶然の出会いによって支えられていること、またその出逢いが「縁」の枠組みで語られ説明されることによって、チベットの宗教的価値観の存続にも寄与していることが明らかになった。これらの成果を、論文や口頭発表によって公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度予定していたフィールド調査について、新型コロナウイルス感染症の影響によって延期を余儀なくされたため、今年度にこれを実施することとしたが、状況が改善されないため、再度延期することとした。その一方で、研究成果のとりまとめに向けて、チベットにおける「縁」概念の用法と宗教的共同性をめぐる議論、コミュニティとの接続について知見を順調に整理することができ、関連する研究成果も出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見を踏まえて、成果の公表につとめる。また調査の実施については感染状況の推移を見守りつつ、慎重に判断することとする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた現地調査が新型コロナウイルス感染症の影響で延期を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。調査の実施については感染状況を見極めながら慎重に判断し、実施困難な場合は研究成果のとりまとめに関わる項目への支出を検討する。
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Research Products
(5 results)