2016 Fiscal Year Research-status Report
脂肪特異的Creg1-Tgマウスを用いる褐色脂肪化とメタボリック症候群改善の検討
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16K21453
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
橋本 理尋 中部大学, 生命健康科学部, 助手 (90724253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 褐色脂肪 / メタボリックシンドローム / Creg1 / UCP1 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色脂肪細胞は中性脂肪の燃焼により熱産生を行う特殊な細胞であり、脂肪組織における褐色脂肪の分化誘導促進が肥満やメタボの予防・治療に効果的であることが明らかとなってきた。申請者らは、褐色脂肪細胞への新規分化誘導因子として内分泌糖タンパク質であるCreg1の同定に成功し、褐色脂肪化におけるCreg1の分子機能についてインビトロ及びインビボにおける検証を進めてきた。 本研究では、生体内におけるCreg1の褐色脂肪化への影響及びメタボ病態の改善作用を詳細に検討するため、脂肪組織特異的にCreg1の発現が誘導されるトランスジェニック(Tg)マウスを独自に樹立した。平成28年度は、Tgマウスの褐色脂肪組織の活性レベルが野生型マウスと比較して有意に上昇していることを見出し、加えて白色脂肪組織においても褐色脂肪のマーカーであるUCP1の発現上昇を確認することに成功した。また高脂肪食で飼育したCreg1-Tgマウスでは、褐色脂肪化の促進に伴い有意な体重の増加抑制効果が認められ、インスリン抵抗性等の糖代謝能力に関しても改善傾向が認められた。これらの結果は、Creg1が生体内においても褐色脂肪の分化誘導因子として機能しており、Creg1の発現誘導によりメタボ病態の改善が期待されることを示唆している。 初年度の解析では、Creg1がマウス生体内においてメタボ改善に寄与する因子であるという大変興味深い結果を見出すことに成功したが、一方でCreg1が褐色脂肪細胞の分化誘導を促進する詳細な分子メカニズムの解明には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の解析では、独自に樹立した脂肪組織特異的Creg1-Tgマウスを駆使し、Creg1が生体内においても脂肪組織の褐色脂肪化を促進し、抗肥満作用及びメタボ改善効果を発揮する新規の内分泌因子である可能性を示唆する興味深い結果を得ることに成功した。加えて本研究では、Creg1が褐色脂肪細胞の分化誘導を促進する分子機構を解明するため、Creg1と相互作用する分子の探索を進めているが、初年度の解析では相互作用分子の同定には至らなかった。よって、本研究は、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は新規に樹立した脂肪組織特異的Creg1-Tgマウスを効果的に活用し、生体内におけるCreg1の生理機能の一端を解明することに成功した。平成29年度は、引き続きCreg1-Tgマウスを利用してCreg1の脂質代謝や糖代謝における機能を検証していく予定である。またインビトロの実験系においては、野生型マウスと比較してCreg1タンパク量が多いことが期待される若齢Creg1-Tgマウスの脂肪組織から単離した初代培養細胞を活用し、褐色脂肪化に関わるCreg1との相互作用分子を探索する予定である。またこれを足掛かりとして、Creg1が褐色脂肪化を促進する分子メカニズムの解明を目指す。
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