2016 Fiscal Year Research-status Report
熱電特性の大幅な改善を実現するFe2VAl系人工超格子膜の創製
Project/Area Number |
16K21464
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
廣井 慧 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 技術開発・共用部門, NIMSポスドク研究員 (10761588)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱電材料 / 人工超格子 / フォノンエンジニアリング / 高周波マグネトロンスパッタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度は、本研究の目標である「Fe2VAl系人工超格子膜の作成による格子熱伝導率の低減」を達成するために、Fe2VAl系人工超格子膜の作成条件の最適化を試みた。その結果、人工超格子を構成する重金属層の選定、平滑でエピタキシャル成長する成膜条件の特定、ナノメートルオーダーの薄膜成長速度制御に成功した。また、確度の高い熱伝導率測定を行うために、3層膜解析法を用いたサーモリフレクタンス測定の解析環境を構築した。上記の人工超格子作成条件を元に、様々な周期長を持つFe2VAl/重金属人工超格子の作成および熱伝導度の測定を行った。その結果、熱伝導度は周期長に対して強い相関を示し、周期長の短縮に伴い熱伝導度が大幅に減少することが確認でき、大きな成果を得た。 本研究では、人工超格子膜の熱伝導度低減効果を、「膜内の質量分布のフーリエ成分」と「界面熱抵抗」の二つの寄与に分解し、定量的な解析を行うことで、熱伝導度制御に関する知見を得ることを目指す。Fe2VAl層と固溶しない重金属層の選定、平滑でかつエピタキシャル成長をする試料作製条件の特定は、解析の際の余分な因子を無くすために重要である。本研究の解析結果はFe2VAl系熱電材料のみならず、他の熱電材料や低格子熱伝導度を要求する材料への応用に向けた革新的な設計指針を与えると考えている。 今後の研究方針としては、ピコ秒パルスレーザーを使用したサーモリフレクタンス法による界面熱抵抗の直接評価や、異なる重金属層をもつ人工超格子の熱伝導度の比較を通じ、定量的な解析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画では、「人工超格子膜作成に向けた成膜条件の最適化」を目標と定めていた。現在までの研究により、Fe2VAl系人工超格子を構成する材料として、Fe2VAl系材料と同様立方晶であり、かつFe2VAl層との固溶が起こらないモリブデンとタングステンが適切であることを見出した。また、これらの重金属層を平滑なエピタキシャル膜として作成できる成膜温度やアルゴンガス圧力等の成膜条件の特定にも成功し、単結晶基板上へのFe2VAl系人工超格子作成技術を確立した。さらに、X線反射率測定の解析環境を整えることで、薄膜の成長速度や界面の平滑度をナノメートルオーダーで見積もることを可能にした。これにより、任意の周期長を持つ人工超格子の作成が実現し、算出に試料膜厚の測定値を要する熱伝導度測定もできるようになった。ナノ秒パルスレーザーを用いたサーモリフレクタンス法による面直方位熱伝導度測定の確度向上を目的とし、3層膜解析法を取り入れ、試料作製プロセスとデータ解析プログラムの作成を行った。 上記の研究から求めた試料作製条件を元に、周期長をさまざまに変化させたFe2VAl/重金属層から構成される人工超格子膜を作成した。作成したすべての人工超格子で、高い平坦性とエピタキシャル成長が確認されたため、人工超格子作成手法の確立に成功した。さらに本研究を推進するために、作成した人工超格子に対する面直熱伝導度測定を行った。その結果、熱伝導度の周期長に対する強い依存性を確認できたため、試料の人工超格子化による熱伝導度の低減効果を実証することに成功した。 以上の進捗状況より、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は前年度中の異動に伴い研究環境が変わったため、本年度は以前まで所属していた豊田工業大学と密に連携をとり、研究を継続していく。研究環境上、人工超格子試料の面直方位に沿ったゼーベック係数および電気伝導度測定装置の開発は難しいため、今後は研究目標を「熱伝導率低減効果を膜内の質量分布のフーリエ成分の寄与と界面熱抵抗の寄与に分解した定量的な解析」に絞り、研究を進める。 目標の達成のために、まず前年度の研究で明らかにした「人工超格子による熱伝導度の低減効果」についての定量評価を行う。熱伝導度低減効果は、「人工超格子内の質量分布」と「界面熱抵抗」の二つの因子の寄与が大きいと考えられるため、界面熱抵抗の直接測定を行い、二つの因子への分解を試みる。具体的には、タングステンとFe2VAlから構成される3層膜の熱伝導度を、ピコ秒パルスレーザーを使用したサーモリフレクタンス法で測定することで、タングステン/Fe2VAl層の界面に存在する熱抵抗を評価する。得られる結果を人工超格子の熱伝導度測定の結果と比較することで、人工超格子の熱伝導度低下に寄与する界面熱抵抗の割合を分離できるものと考えている。また、人工超格子を構成する重金属層としてモリブデンとタングステンを使用しているため、それぞれの重金属層を使用した際の熱伝導度の周期依存性を比較し、質量分布のフーリエ成分の寄与に着目した解析を並行して行う。 これらの解析結果は、フォノンエンジニアリングの分野において重要な知見となりうることから、早期の公開を目指す。
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Causes of Carryover |
昨年度請求額の大半は、前所属機関にて予定通り執行することができた。しかし、研究責任者の所属機関異動に伴い物品購入等の支出予定に変更が生じたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、本研究を継続することを目的とした前所属機関への出張にかかる費用、およびその実験に必要な単結晶基板の購入に充てる。また、今年度は複数の論文投稿を予定しているため、その投稿費用の一部に充てることを予定している。
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Research Products
(6 results)