2018 Fiscal Year Research-status Report
昭和戦前期における女子水泳の組織化とその成果に関する研究
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16K21467
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
木村 華織 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 講師 (50634581)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 女子水泳 / 日本水上競技連盟 / 女子部 / 東京YWCA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、進行が遅れていた課題3(課題3-1:女子水泳の組織化前後の競技会開催数、課題3-2:水泳連盟の歴代役員構成の調査・検討)を第一に、その後、課題4:昭和戦前期における女子水泳の組織化の全体像に関する総合的検証に着手した。課題3-1は、1932年以降に各市府県にて開催された女子の水泳競技会数を調査し、課題3-2は、1933-1939年までの歴代役員構成及び男女比を算出し検討した。本年度の研究成果は以下の通りである。 課題3-1:先行研究(來田,1997)の成果を踏まえ、本研究では、1933-1939年を対象にした。その結果、女子の競技会数が増加する時期と水泳連盟をはじめとする競技団体の動きに関連があることが示唆された。日本女子水上競技連盟が設立された1929年、水泳連盟に女子部が設置された1932年、女子部に地方委員が設けられた1937年は、いずれも女子の競技会数が増加する傾向にあった。特に女子部の設置と地方に女子部委員を配置したことは、水泳連盟が女子の普及に力を入れた表れであり、競技会数の増加に影響していたといえる。女子の水泳競技会は、1932年の女子部設置以降、1939年までの間に約2倍に増加していた。 課題3-2:1933-1939年までの水泳連盟女子部の委員構成は、1939年の主任1名を除いては全員が女性で構成されていた。また、女子部の設置以降は理事や女子部以外の委員会(飛込競技委員、記録委員、在外委員、関西地方委員会)にも女性が登用されていた。1933-1938年までは理事に1名、1937-1938年には常務理事にも1名の女性が就任していた。本研究で調査した期間の専門委員の男女割合は、いずれの年も女性が10%を超えており、1939年には15%を超えていた。現在も競技組織によっては女性役員が10%を超えない状況にあって、当時の水泳連盟は先進的だったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度(平成28年度)の遅れが影響し、当初の研究計画が全体的に遅れている。今年度(平成30年度)は、昨年度分の遂行課題(課題3)を年度初旬に終了させ、遅れを取り戻しつつあったが、本研究の総括となる課題4については、十分に検討を行う時間を確保することができなかった。これにより、投稿論文の執筆・投稿を含む研究計画に遅延が生じてしまった。今年度、遅延が生じた事由は以下の通りである。1)研究代表者の学内業務の多忙により、女子水泳の組織化の全体像に関する総合的検証に必要な時間が十分に確保できなかったこと、2)考察に必要となる聞き取り調査や手記の入手を計画通り進めることができなかったこと、以上の2点があげられる。このため、補助事業期間の延長を申請し、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、昭和戦前期にみられた女子水泳の組織化の過程とその成果を明らかにすることを目的に、1)競技団体を軸に女子水泳が組織化されていく過程において、社会体育療育の活動として展開された東京YWCAの事業がどのように関わっていたのか、2)女子水泳が組織化されたことによってもたらされた変化、の2点について検討を行うものであった。平成28年度の研究開始時から4つの研究課題を設定し、3カ年計画で研究を進めてきた。課題1:東京YWCAが行ってきた水泳事業に関する整理、課題2:東京YWCAが女子水泳の組織化に与えた影響、課題3:女子水泳の組織化前後の競技会開催数および水連の歴代の役員構成の検討、課題4:昭和戦前期における女子水泳の組織化の全体像の検証、である。しかし、研究が遅延し補助事業期間中に研究を終了することができないと判断したため、1年間の補助事業期間延長を申請した。 補助事業期間を延長した最終年度(令和元年度)は、平成30年度に計画されていた課題4:昭和戦前期における女子水泳の組織化の全体像の検証および研究成果物の作成を行う。全体像の検証においては、本研究課題(課題1から3)の成果に研究代表者の従来の成果を加え、日本女子水上競技連盟、日本水上競技連盟、東京YWCA、高等女学校という複数組織の関係性に焦点をあてる。さらに、女子水泳の普及実態から、女子部設置の効果、すなわち女性をスポーツ組織の意思決定機関や役員に登用することの意義について考察する。 以上、4カ年の研究成果を投稿論文として投稿し、公表する。
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Causes of Carryover |
(理由)研究全体の遅れにより、平成30年度に計画していた聞き取り調査、学会での成果発表および論文投稿ができなかった。そのため、旅費および論文投稿費が未使用となり、次年度繰越金が生じた。 (使用計画)平成30年度に実施できなかった聞き取り調査については、再度調査依頼を行い、調査対象者との日程調整を試みる予定である。また、研究成果のまとめとして計画していた投稿論文の作成および発表を行う予定である。以上、繰越金については予算申請通り(調査旅費、論文投稿費、学会発表旅費)に使用する予定である。但し、校務との関係から予定していた学会に参加できない場合には、研究成果の公表は、投稿論文や執筆物による成果報告に絞る可能性もある。
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