2017 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア外膜のAAA-ATPase Msp1によるタンパク質品質管理機構
Project/Area Number |
16K21471
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
松本 俊介 京都産業大学, 総合生命科学部, 学振特別研究員 (70704295)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タンパク質分解 / ミトコンドリア / 品質管理 / Msp1 / Cdc48 / Doa10 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,Msp1とCdc48という2つのAAA-ATPアーゼの役割分担とDoa10による基質のユビキチン化とMsp1およびCdc48による膜引き抜きのどちらが先に起こるステップなのかを決定し,ミスターゲットTAタンパク質の分解機構の全容解明を目指した.まず,野生型酵母において,Msp1の基質のユビキチン化が細胞内のどこで起こるのかを調べた.細胞抽出液をミトコンドリア画分とサイトゾルに分画し,それぞれの画分から基質のユビキチン化を調べたところ,ユビキチン化基質はミトコンドリア画分とサイトゾルの両方に検出された.次に,msp1欠損株において,基質のユビキチン化を調べたところ,基質のユビキチン化はミトコンドリア画分とサイトゾル画分の両方に検出されたが,野生型酵母と比べて,ユビキチン化の効率が大きく低下することがわかった.一方,cdc48温度感受性株を用いて,基質のユビキチン化を調べたところ,ポリユビキチン化された基質はミトコンドリア膜に蓄積することがわかった.共免疫沈降実験によって,Msp1とCdc48のユビキチン化状態に応じた基質との結合を調べたところ,Msp1は非ユビキチン化基質と結合するが,ポリユビキチン化基質との結合は確認できなかった.一方で,Cdc48は非ユビキチン化とポリユビキチン化基質の両方と結合することがわかった.さらに,msp1欠損株を用いて,Cdc48と基質の結合を調べたところ,Cdc48と結合するポリユビキチン化基質の量が大きく減少した.このことから,Msp1は,Doa10による基質のユビキチン化を促進する因子であり,ポリユビキチン化基質をミトコンドリア膜から引き抜くためには,Cdc48が重要であることが示唆された.以上の結果をもとに,研究代表者は,ミスターゲットTAタンパク質の分解モデルを提唱した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア外膜のAAA-ATPアーゼMsp1の機能構造解析では,昨年度に引き続いて期待通りの進展があった.msp1欠損株とcdc48温度感受性株を用いた基質のユビキチン化解析と共免疫沈降実験によって,Msp1とCdc48のユビキチン化状態に応じた基質との結合を調べることによって,Msp1が基質をアンフォールティングすることで,Doa10による基質のミトコンドリア膜上でのユビキチン化を促進すること,そしてユビキチン化された基質はCdc48によって膜から引き抜かれ,プロテアソーム分解に至るというモデルを提唱することができたのは,重要な進展であると評価できる.また,Msp1のX線結晶構造解析については.昨年からゼブラフィッシュ由来Msp1ホモログの結晶化に成功し,4オングストローム分解能のnativeデータを得ることができ,現在結晶化条件の最適化を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Msp1が関わる誤配送されたTAタンパク質の分解過程をCdc48との関係,ユビキチン化との関係に注目しつつ,精製因子を用いたin vitro再構成系により明らかにする.最近,KeenanらがMsp1のATPaseコアドメインの構造を報告するとともに,全長Msp1をリポソームに再構成し,本来基質ではない膜タンパク質についてMsp1がATP依存に膜から引き抜くことをin vitroで示した(Mol. Cell, 67:194-202, 2017).しかし,このin vitro系の引き抜き効率は低く(10%程度),Msp1が細胞内で本当に基質を引き抜けるかどうかは明らかでない.引き抜き効率が低い理由として,基質のユビキチン化が引き抜きに必要,あるいは引き抜きと基質ユビキチン化が共役する必要がある,等が考えられる.さらに,Msp1の構造解析については,これまで決定されているのはMsp1のコアドメイン(単量体)のみであり(Keenanら2017;松本ら,未発表),アセンブリー構造は不明である.一方で近年,AAA-ATPaseのクライオ電顕構造解析が次々に報告され,これまでのX線構造解析では不明であった基質との複合体構造が明らかになり,基質をアンフォールドする仕組みが見つかったりしている.したがって,Msp1についても,アセンブリー構造の解明が機能の理解に必須であると考え,現在クライオ電顕解析の利用を計画している.
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Causes of Carryover |
ミトコンドリアAAA-ATPase Msp1による基質タンパク質のユビキチン化および膜引き抜きを試験管内で再構成する実験系の構築が予定よりも遅れているため.界面活性剤,合成脂質,in vitro転写翻訳系に使用する試薬の購入を計画している.
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Research Products
(2 results)