2016 Fiscal Year Research-status Report
小胞体-ミトコンドリア間のリン脂質輸送タンパク質VAT-1の構造機能解析
Project/Area Number |
16K21473
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
渡邊 康紀 京都産業大学, 総合生命科学部, 学振特別研究員 (30772636)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リン脂質輸送タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
高等真核生物の小胞体膜からミトコンドリア外膜へのホスファチジルセリン (PS)輸送能が指摘されているVAT-1についてPS輸送の分子メカニズムを明らかにするため,VAT-1の構造機能解析を行っている.ヒト由来VAT-1のフレキシブルであると予測されるN末端40残基を欠損させたコンストラクトを大腸菌の系を用いて発現,精製,結晶化に成功し,2.4オングストローム分解能の回折データを収集した.VAT-1のホモログである構造既知のVAT-1Lをモデル分子とした分子置換法により位相を決定した.リポソームを用いたflotation assayによりVAT-1は酸性リン脂質を含むリポソームに結合することが明らかになった.VAT-1には塩基性アミノ酸と疎水性アミノ酸に富んだループ領域があるが,その領域は結晶構造中では電子密度が観測されずディスオーダーしていた.ディスオーダーしていたループ領域を欠損させると,PSの輸送活性が顕著に減少し,酸性リン脂質を含むリポソームとの結合は見られなくなった.以上の結果から,VAT-1のディスオーダーしていたループ領域は膜への結合及びPSの輸送に重要であることが示唆された.現在,VAT-1によるリポソーム間のPS輸送をMSを用いて解析する系を構築中であり,アフリカツメガエルの卵母細胞から単離した小胞体およびミトコンドリアを用いてVAT-1によるPS輸送活性の解析を試みている.また,VAT-1遺伝子欠損HeLa細胞を作製中であり,今後構造に基づいたより詳細なin vivo機能解析を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
VAT-1の構造決定に成功し,得られた構造に基づいた変異解析により膜への結合に重要な領域の同定まで成功したことは当初の計画以上の進捗であり,非常に順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
アフリカツメガエルの卵母細胞から単離した小胞体およびミトコンドリアを用いて各種VAT-1変異体のPS輸送活性の解析により,VAT-1のPS輸送に重要な領域を同定し,PS輸送の分子メカニズムを明らかにする.また,細胞内で実際にVAT-1がPSの輸送を担っているという報告例は無いため,VAT-1遺伝子欠損HeLa細胞を作製し,ミトコンドリアのリン脂質組成を調べることでVAT-1によるPS輸送の生理的意義を明らかにする.
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Causes of Carryover |
VAT-1遺伝子欠損HeLa細胞の作製に必要なVAT-1抗体の作製の必要性が生じた時期が平成28年度末であったため,年度内の抗体の納期には間に合わず,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
VAT-1抗体の作製に使用する.
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