2016 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝におけるカルシウムシグナルを制御するイオンチャネルと骨免疫疾患との関連
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16K21474
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
鬼頭 宏彰 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40749181)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イオンチャネル / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / カルシウム活性化カリウムチャネル / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨組織は骨形成と骨吸収による骨リモデリングにより恒常性を保っており、骨リモデリング破綻が骨免疫疾患の増悪に関与すると考えられている。骨と免疫系はサイトカインなどのシグナル系を共有し密接に関係している。これまで免疫細胞に対して様々なイオンチャネル研究が進められてきたが、骨免疫疾患における骨関連細胞を標的としたイオンチャネル研究は十分には行われていない。そこで応募者は、骨免疫疾患におけるイオンチャネル創薬を目的として、骨形成を担う骨芽細胞及び骨吸収を担う破骨細胞のイオンチャネルを介した細胞機能制御機構を検討した。 今年度の実験結果より、マウス頭頂骨由来前骨芽細胞MC3T3-E1においてストア作動性Ca2+流入(SOCE)を介したCa2+流入が細胞増殖に寄与することが明らかとなった。さらに、MC3T3-E1に機能発現するCa2+活性化K+チャネルKCa3.1はSOCEの活性化に伴い活性化することで細胞膜を過分極させ細胞外からのCa2+流入を促進させることでCa2+シグナルの形成に寄与し、細胞増殖制御に関与することが明らかとなった。また、KCa3.1はMC3T3-E1の細胞周期のうちG1期に活性が亢進することにより、G1期からS期への細胞周期進行に寄与することが示されたことから、KCa3.1はG1-S期における細胞周期進行を促進することで前骨芽細胞の細胞増殖を制御する可能性が明らかとなった。 さらに、本研究成果よりビタミンD刺激によるマウス前骨芽細胞の細胞増殖抑制作用に対して、KCa3.1の発現低下が一部関与する可能性が示唆されていることから、KCa3.1の生理的役割についてより詳細に検討する必要が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前骨芽細胞、骨芽細胞を含む骨芽細胞関連細胞の細胞増殖は骨形成において重要な役割を果たしていると考えられている。今回得られた結果は、KCa3.1チャネルが前骨芽細胞の細胞増殖を制御することで、骨の恒常性維持に寄与しうるという新たな知見を示すものである。 しかしながら、MC3T3-E1に機能発現するSOCEを形成するCa2+透過チャネルの分子実体や細胞周期依存的なそれらイオンチャネル発現変化など検討すべき課題は山積しており、更なる検討が必要である。また、骨形成には、前骨芽細胞の骨芽細胞への分化が重要な要素であることから、前骨芽細胞の細胞増殖に加えて骨芽細胞分化に対する各種イオンチャネルの寄与に関しても検討を行う必要がある。現在、細胞分化に関しての検討も実施しており、分化に伴いKCa3.1チャネルの発現が減少する一方で、内向き整流性K+チャネルKir2.1の発現が上昇することを見出している。さらに、Kir2.1チャネルの阻害薬としてBa2+を添加することにより、骨芽細胞の分化の指標であるアルカリフォスファターゼALP活性が抑制されることからKir2.1チャネルが骨芽細胞分化に関与する可能性が考えられる。 また、今年度の研究においては破骨細胞に関する検討は十分には行えておらず、骨芽細胞及び破骨細胞の両者を平行して行い、骨関連細胞におけるイオンチャネルの役割について包括的な検討を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
MC3T3-E1における細胞周期依存的なイオンチャネル活性を検討することで、細胞周期進行におけるイオンチャネル(特にKCa3.1)の寄与を明らかにする。細胞周期同調培養により各細胞周期におけるCa2+動態、静止膜電位、イオンチャネル発現を比較する。 細胞増殖・分化の制御におけるCa2+シグナルの役割を明らかにするために、骨芽細胞が分泌するサイトカインや細胞間因子について検討する。特に骨芽細胞の産生するインスリン様成長因子(IGF)や線維芽細胞成長因子(FGF)の発現変化や各因子に対する感受性変化に関して検討する。細胞増殖制御に関わるKCa3.1及び細胞分化に関わるKir2.1の転写制御機構について、各種転写制御因子を検討してVDR刺激時におけるKCa3.1発現減少機構及び細胞分化におけるKir2.1発現亢進機構を明らかにする。 また、破骨細胞に発現が報告されるものは、大コンダクタンス及び中コンダクタンスKCaチャネルである。これらKCaチャネルの破骨細胞における機能は充分に解明されていないことから、マウス骨髄細胞由来マクロファージ系細胞に対し、選択的阻害薬投与を行うことで破骨細胞分化に対する寄与を解明すると共に、破骨細胞におけるKCaチャネルを介した細胞内シグナル伝達機構に関してもパッチクランプ法、Ca2+イメージング、細胞膜電位測定、分子生物学的検討を行うことで多角的な検討を行う。成熟破骨細胞に対して、象牙質切片を用いたpitアッセイ、あるいは蛍光標識リン酸カルシウム固層化プレートを用いたリン酸カルシウム基質の吸収活性測定により、骨吸収能を測定する。KCaチャネル関連薬適用による骨吸収能の変化を検討することで、イオンチャネルを介した骨吸収メカニズムの解明を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験計画で使用予定であった免疫化学実験関連試薬(主に各種抗体)ののうち一部の購入を次年度に先送りした。イオンチャネルの機能解析に予定以上の時間がかかり、イオンチャネル発現解析の一部を次年度におこなうように変更したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では、今年度購入しなかった各種抗体を購入するとともに、他の実験計画についても予定通り行う予定である。
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[Journal Article] Downregulation of the Ca(2+)-activated K(+) channel KC a3.1 by histone deacetylase inhibition in human breast cancer cells2016
Author(s)
Ohya S, Kanatsuka S, Hatano N, Kito H, Matsui A, Fujimoto M, Matsuba S, Niwa S, Zhan P, Suzuki T, Muraki K
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Journal Title
Pharmacology Reseach & Perspectives
Volume: 4
Pages: e00228
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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