2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21477
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
尹 珍喜 同志社大学, 社会学部, 准教授 (60732253)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 脱北 / 家族・親族ネットワーク / 社会適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本と韓国に居住する脱北者の社会適応に関するジェンダー論的比較研究を行うことである。今年度は、女性脱北者の語りから、北朝鮮社会の家族関係及び家族・親族資源の活用、彼・彼女らをめぐる地域社会の特徴などを把握し、脱北に至るプロセスを分析した。 その結果、得られた内容は以下のようである。まず、女性脱北者の脱北動機について、家族関係の葛藤や生活の困難など辛い現状を乗り越える手段として中国行きが選択されていた。特に、咸鏡北道の場合、北朝鮮内の移動より中国行きを選択しやすい地理的特徴が存在したのである。また、家族・親族から脱北に関する情報を得たり、さらに中国への越境を手伝うブローカーを紹介してもらうなど、脱北のために家族からのサポートを得ていることが確認できた。これらは、彼・彼女らが新しい社会へ定着した後、北朝鮮に残っている家族を呼び寄せる行為につながっていた。最後に、脱北する際の状況について、女性脱北者は人身売買への可能性を認知しており、時には家族によって人身売買が行われることもあった。以上、北朝鮮の地域社会において、家族・親族及び地域社会が脱北するときに有用な資源として機能していることが確認できた。しかし、彼・彼女らが脱北する際に選択する手段は、多くの場合、人権被害を伴うものであり、そういった脱北過程における困難経験は、新しい社会への適応にも影響を与えていた。今後は、その適応過程により注目した調査を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に行った研究活動は内容は以下のようである。 ① 資料収集及び整理:韓国及び日本における脱北者関連書籍及び資料を随時収集し、先行研究の整理を行った。 ② 韓国における聞き取り調査(第1回):8月に韓国在住の女性脱北者への聞き取り調査を準備・実施した。女性脱北者3人に北朝鮮での学校・就職・結婚といったライフイベントについて尋ね、また、脱北動機及び脱北過程、韓国定着後の現状、困難などを尋ねた。 ③ データの整理&分析:調査対象者の許可を得て録取したデータをテキスト化する作業を行い、時系列に整理した。 ④ 論文の作成:複数の研究会で発表を行い、現在論文の作成中である。 以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、以下の内容で進めていく予定である。 ① データの分析、学会報告、投稿論文の作成:第1回目の調査で得られたデータをの分析から、学会報告を行い、投稿論文として発表する。 ② 韓国・日本における聞き取り調査(第2回):第2回目の調査では、男性脱北者を中心に聞き取り調査を実施する。調査対象、質問内容、調査人数などは、昨年度の女性対象者への調査と統一する。 ③ データの整理:前年度と同じく、聞き取り調査の実施後、データのテキスト化、データの時系列整理を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度の交付額に韓国及び日本の聞き取り調査費用が含まれていたが、日本の聞き取り調査は次年度に実施するように計画を変更したため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本の聞き取り調査に使用する予定である。
|