2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K21477
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
尹 珍喜 同志社大学, 社会学部, 准教授 (60732253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脱北者 / 韓国社会への適応 / 支援政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究遂行のために脱北者に関する文献資料の収集、学会発表及び論文の作成、韓国と日本での調査を実施した。これらの研究活動から得られた知見は、以下の通りである。 脱北者に対する韓国社会の認識や位置づけは、北朝鮮との政治関係や国内の情勢によって大きく変化しており、脱北者はその変化に戸惑いながら韓国社会への適応を余儀なくされてきた。具体的には、脱北者は、南北体制分断期は激変する時代を生きぬく行為者として位置づけられていたが、朝鮮戦争期は敵国の出身者として差別の対象として韓国社会の最下位に置かれていた。一方、北朝鮮との政治理念の対立が激しかった冷戦期は、韓国の政治的優越性を強調するため、脱北者は自由を求める英雄として位置づけられ、プロパガンダの道具に利用されたのである。しかし、北朝鮮との理念的な対立が収まった脱冷戦期および脱北者数が急増した北朝鮮の経済困難期には、脱北者は政治的対象というよりも福祉の対象として扱われるようになっていった。 現在、韓国政府における脱北者の支援政策は、定着金はあるものの、生活保護への一環として実施されている。定着金については、韓国入国後に脱北を手伝ったブローカーへの費用の支払いに当てられることが多く、脱北者の手元にはほとんど残らない。他方、生活保護費の支給は就職の努力を強化する方向に向かっている。しかし脱北者の就職はままならず、60~80年代の手厚い補償を期待する脱北者は、その期待と現実のギャップに悩まされることも少なくない。 今後、北朝鮮の経済開放により更なる脱北者数の増加が予想される中、最大の受け入れ国になる韓国は、彼らが韓国社会への適応に本当に必要なニーズを正確に把握する必要がある。この時、脱北者における韓国社会への適応を、政治・社会・経済すべてに目配りした総合的な視点から接近する必要が求められるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
韓国における資料収集および脱北者へのインタビュー調査の場合、計画通り順調に進展しており、データ分析とともに論文作成に取り組んでいる。一方、日本に在住する脱北者へのインタビュー調査の場合、対象者の選別やインタビュー調査の実施に至るまでやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、日本でのインタビュー調査の実施、学会発表、報告書および論文の作成、対象者へのフィードバックを行う予定である。 まず、日本でのインタビュー調査では、日本に在住する脱北者へのインタビュー調査に邁進し、データ分析を行う。しかし、対象者へのインタビューが困難な場合は、彼・彼女らを支援するNGO団体のメンバーにインタビューする可能性も考慮に入れる。 また、今まで行った調査で得られたデータは、学会報告、報告書および論文作成としてまとめる。さらに、公開した研究内容は、研究協力者、調査対象者にフィードバックを行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に実施する韓国および日本での追加調査費用、報告書作成などに必要な経費を確保するために、次年度使用額が生じたのである。
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Research Products
(3 results)