2016 Fiscal Year Research-status Report
コンテキストに応じた歌詞検索のための感性理解エンジンの開発
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16K21482
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山西 良典 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (50700522)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歌詞検索 / 音楽情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「ユーザの要求コンテキストに感性的に適合した歌詞検索を実現するための,印象や感情とその強度の理解エンジン」を開発することにある.このマイルストーンとして,A)歌詞で用いられる単語の感性モデル化手法,B)歌詞独特の表現技法からの感性の強度推定手法の開発を設定した. 本年度は,このうちの歌詞で用いられる単語の感性モデル化手法の開発に取り組み,その要素研究として「歌詞中の単語モデル化手法」を検討した.ここでは,近年の自然言語処理研究において有用性が確認されている単語の分散表現手法を適用して歌詞の大規模コーパスを学習することで,歌詞中で用いられる単語について,その前後の文脈や単語中のサブワードを考慮した単語モデルの構築を行った.このとき,歌詞コーパスから繰り返されるフレーズや類似したフレーズを除去したコーパスを生成し,それぞれのコーパスを用いた単語モデルと感性との対応付けの精度を比較検討し,歌詞中の単語モデル化において歌詞独特の表現技法である「繰り返し構造」や「類似フレーズ」がモデルに与える影響について考察した.この研究項目については,カナダUBCのGiusepee Careniniからの研究協力を受けて実施した. また,歌詞の音響的側面にも着目し,歌詞からの発音記号列への変換ルールを確立し,日本語と英語歌詞での発音の類似性についても分析を行った.これは,押韻などの歌詞特徴を扱うための基礎技術として用いることが可能である他,楽曲歌唱による発音訓練などの音楽の言語教育への応用といった新しい可能性を発見するに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歌詞のベクトルモデルと楽曲に対する感性との対応付け手法を検討し,歌詞中の単語をベクトルモデルとして扱う単語モデル化手法について一定の指針を決定し,歌詞中の単語モデル化手法については順調に進行していると言える.一方で,歌詞における表現技法を考慮した印象や感情の強度推定手法の開発については,着手したものの具体的な成果が得られておらず,計画に対して遅れている状況と言える. また,本研究の派生研究として歌詞の発音にも着目し,歌詞からの発音記号列生成規則を開発した.これは,押韻などの歌詞中の音響的特徴を捉えるための基礎技術として応用可能であり,発音情報を歌詞の特徴量として扱うための準備が整ったと言える.本研究項目については,国内研究会での発表と受賞を経て,現在,国内学術論文誌への論文投稿を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,単語ベクトルモデルと感性情報との対応付け方法について比較検討し,具体的なアプリケーションとして歌詞ベクトルモデルと感性との対応けに基づいた歌詞検索システムの構築を目指す.このとき,ユーザの入力として受け付ける対象となる感性について様々な可能性を検討する.ユーザにとって歌詞検索が有効活用される場面を広く想定し,「感情」「風景」「印象」「場所」「時間」などの様々な目的属性を用意し,それぞれと単語ベクトルモデルとの対応付けモデルを構築したうえで,そのモデルの有用性について検索精度による客観指標による量的な評価およびユーザ観察などによる主観的な指標による質的な評価の両側面から検索システムの評価を行っていく. また,歌詞の発音特徴も取り入れた歌詞のベクトルモデルの歌詞検索に対する有用性についても考察し,押韻が多用されるジャンルの楽曲検索や,「口ずさみやすさ」のような聴取のみならず歌唱といった能動的な音楽の楽しみ方における歌詞検索技術の応用についても検討していく.
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Causes of Carryover |
本年度は,単語のモデル化手法について充分な時間を使って検討したため,感性の強度推定や感性との対応付け手法についての進捗が遅れた.このため,当初予定していた国際会議での発表,論文誌への掲載費といった経費が次年度使用額として生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に発表,投稿を見送った国際会議,および,論文誌での発表経費として使用する予定である.
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