2017 Fiscal Year Research-status Report
生殖補助医療の法制度化による子の利益保護と家族形成の支援
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16K21490
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
金 成恩 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (00723884)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生殖補助医療 / 出自を知る権利 / 真実告知 / 当事者支援 / 情報提供 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、子どもへの真実告知と当事者支援を中心に研究し、それを国内・国外の学会やシンポジウムで発表を行った。今年度の助成金は、主に上記の研究を遂行するための調査費(アンケート調査や現地調査)及び学会旅費に当てられた。 1.アンケート調査実施:ネット・アンケート調査による一般市民(517名)を対象とした「子の出自を知る権利」と「告知」に関する意識調査を実施した。 2.ヒアリング調査(国内・外):(1)島根県の「島根モデル」の関係者、(2)韓国の大韓産婦人科学会の倫理委員(ソウル大学病院の医師)にヒアリングを行い、最新の知見を得た。 3.学会での報告や研究会の参加:(1)1の分析の結果を日本法と心理学会などで、報告した。(2)生殖補助医療関連シンポ及び研究会に積極的に参加した。 4.業績:(1)Kim Sungeun,「Support system for children born through ART:An inquiry into Japanese understanding of notifying of the truth」East Asian Association of Psychology and law, 11th annual Conference、national Taiwan University, Taiwan, 2017年12月17日、(2)金成恩,「子の出自を知る権利・真実告知に対する市民意識」、山崎優子・相澤育郎・金成恩,「ワークショップ 改革がすすまない3つの課題と人権に対する市民意識-研究と教育のアプローチの可能性について」、法と心理学会第18回学術大会、成城大学、2017年10月15日、(3)金成恩,「非配偶者間生殖補助医療と「真実告知」の行方」,立命館大学人間科学研究所年次総会,2017年12月10日
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.島根モデルの調査を通じて「医療・学・官・児童福祉の連携の手法」を明らかにした。 :島根県松江市では、2013年から不妊クリニック・カウンセラー・児童相談所・乳児院・島根県行政の共同で、不妊カップルと社会的養護下にある子どもの縁を取り結ぶ「島根モデル」を構築している。「島根モデル」の調査を通じて当事者支援のあり方を模索しようとし、2017年8月、島根県を訪問し、「島根モデル」の関係者(不妊クリニック院長、不妊カウンセラー、県長、乳児院の職人、不妊当事者)をインタビューした。 2.市民意識調査の結果分析を通じて「告知に対する当事者支援のあり方」を明らかにした。 :ネット調査会社に登録している全国の12歳~69歳までの男女517人を対象にし、「出自を知る権利」、「真実告知」に対する市民意識調査を行った。当事者性の違いによる認識の差とその結果に基づく教育と支援の必要性を考察するため、「未成年層(12~19才)」、「親世代(20~49才)」、「祖父母世代(50~69才)」に分けて分析を行った。 3.海外(韓国)フィールドスタディを通じて、ガイドラインの改正の背景と実施状況などを調査した。 :日韓とも、生殖補助医療に関する法律はないため、医療学会(日本:産婦人科学会)のガイドラインによって生殖補助医療の実施が規制されている。2017年7月に韓国の「大韓産婦人科学会」の生殖補助指針書の改正が行われ、条件付きの卵子提供や代理懐胎が可能になった。さらに、子の出自を知る権利も言及しているため、資料収集及び詳細の内容調査のため、2018年3月にソウル大学病院、生殖補助医療専門の教授を訪問した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.海外フィールドスタディ:本研究テーマに関して先進的な対応をしているベルギー、フィランド(2018年9月予定)と卵子提供・代理懐胎に慎重、抑制的なドイツ(2019年2月予定)を、それぞれの事情と医療、当事者、法制度の相互関連を調査する。 2.関連学会での具体案の提起 (1)確定:「A proposal on“truth-telling”support system for donor-conceived families」というテーマで『European Association of Psychology and Law(EAPL2018 )』採択され、2018年6月26日~29日@フィランドで報告する。 (2)予定:日本生殖医学会(2018年9月)East Asian Association of Psychology and law@立命館大学(2018年12月)及び、日本法と心理学会(2018年10月)、日本ジェンダー法学会(2018年12月)などで、研究内容を報告する。 3.成果公表(まとめ):(1)公開研究会の開催:平成28年~30年度の研究を踏まえて、具体的な提案について、公開研究会を複数回、持つ。(2)論文の公表 4.本題の研究を発展させ、本人を代表とする科学研究費(基盤研究C)に応募
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Causes of Carryover |
1.2017年5月ベルギーで開かれたヨーロッパ法心理学会(EAPL2017)で報告の内容が採択され、発表する予定でしたが、仕事でいきなり行けなくなり、海外学会旅費を使えなかった。 2.2017年12月台湾で開催された「East Asian Association of Psychology and law」の学会で発表があった。その費用は科研費で使う予定でしたが、別の個人研究費を使用した。 3.次年度使用計画は、2018年度の海外学会(EAPL2017@フィランド)の旅費と海外調査などに使用する。
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Remarks |
金成恩,「非配偶者間生殖補助医療と「真実告知」の行方」,立命館大学人間科学研究所年次総会,2017年12月10日
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Research Products
(2 results)