2017 Fiscal Year Research-status Report
裁判員裁判評議を想定した集団討議実験と大型模擬裁判による比較の試み
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16K21491
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
若林 宏輔 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (40707783)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 裁判員裁判 / 評議 / 集団意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は平成29年度から平成30年度に渡り、1.地方裁判所模擬裁判データの収集と分析を並行させながら、2.小集団評議の実験を行い比較するデータ収集と分析を行い、最終年度(平成30年度)に3.大型の模擬裁判員裁判実験においてこれまで蓄積した研究知見を確かめることを目的としてきた。昨年度末の時点で2の実験計画については手法を変更し、また主として、1.のデータ分析手法の検討として計画してきた4.テキストマイニングによる評議分析について中心的に検討してきた。 まず2.に関しては、当初「集団サイズの違いによる集団意思決定内容の分析」という評議内の人数比を基にした実験計画を立てていたが、裁判官役の妥当性の操作が困難であることから、裁判員評議を更に抽象化し、量刑相場の提示者としての裁判官と裁判官以外(市民、人工知能等)を操作した心理学実験を行い、市民の量刑判断への裁判官の影響力を推定する実験を複数行った。またこれらを学会報告し論文化した。 次に1.については今年度は新たな模擬裁判のデータを得られなかったが、初年度に、研究協力者との共著論文(小坂・若林・サトウ,2016)で得られた知見をもとに、新たに時間を捨象せずにテキストマイニングを用いた評議分析手法の方法を開発し、これを学会報告および論文化をおこない、これを現在投稿中である。 最後に、3.大型模擬裁判員裁判 の実施については、上記の分析手法を活かすために、評議内の話題の展開(時間順)を操作した評議体グループを比較対象とした実験とする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度時点で、2.集団討議実験からの比較については、当初想定していた実験計画が専門家役参加者確保が困難となったことなどから計画を変更した。今年度は、この裁判官という専門家とそれ以外のパーソナリティ特徴を持つ対象(専門性の有無、情報の正確性)からの評議内の量刑相場の提示について扱う計画に切り替えて実験を行い、当初の予定とは異なるが裁判官の影響力の推定に用いることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として、まず 1. 地方裁判所模擬裁判データの収集と分析については、今後も各地方裁判所等での模擬裁判員裁判への積極的参加等を通してデータを収集していく予定である。2.については、計画変更後の実験結果および新たな実験から、評議における市民への裁判官の影響力を推定する。また4.裁判員裁判評議の分析技術の向上については、これらを論文化したものを投稿し成果を得る。そして最終年度の3.大型模擬裁判員裁判に関しては、この分析手法の有効性が確かめられるように計画し年内に行う予定である。
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Causes of Carryover |
30万円ほど未使用の額が残っているが、執行が2018年度に入ったためであり、2017年度の旅費等に使用されている。
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