2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the Exchange of Preceptual Thought between Japan and China
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16K21497
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
大谷 由香 龍谷大学, 文学部, 准教授 (50727881)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 行基 / 日宋交流 / 戒律復興 / 律宗 / 南山宗 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までは、日宋交流によって、日本仏教の戒律思想が宋国の仏教界にどのような影響を与えたかを中心として研究成果を出してきたが、最終年度には日本仏教が日宋交流における仏教学的成果をどのように活用したのかを中心に研究を行った。 結果として、鎌倉期の律宗復興運動が、奈良時代に活躍した行基菩薩の遺骨の発掘を契機として盛り上がり、新来の宋国での寺院生活が如法の生活として実践される一方で、教学的には積極的に奈良時代への回顧がみられることが明らかとなった。奈良時代の律宗は、興福寺と東大寺の堂衆によって担われていたが、興福寺律宗は法相宗、東大寺律宗は華厳宗と三論宗というように、それぞれの立場で戒観研究が行われていた。このため覚盛や叡尊といった興福寺常喜院で学んだ人師は法相宗学によって戒律研究を深め、その後に復興した東大寺戒壇院の住持となった凝然は華厳宗学研究を行った。これらはいずれも奈良時代のあるべき律宗の教学復興であったとみなすことができる。唐代に生まれ宋代には飛躍的発展を遂げた南山宗の教学がリアルタイムに流入していたにも関わらず、それらは生活行儀の参考として使用されるに留まっており、積極的な教学研究が行われるのは14世紀半ば以降であろうと考えられる。 あるべき寺院生活を伝える宋国の実態をリアルタイムに摂取しながら「その生活は実は奈良時代にすでに実践されていたものであり、我々はその復興をしている」という自負の上に、律宗復興運動が行われていたことを確認できた。 なおその精神は現在も受け継がれている。最終年度には、鎌倉期に復興された儀則に基づき、唐招提寺で布薩の復興が行われた。儀則の読み解きや歴史的位置などについて昨年度までに提示した研究成果が応用実践された。
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Research Products
(7 results)